今までの話
第1話: プログラミングスクール選びで失敗し、54万円をドブに捨てた話
第2話: 未経験からエンジニアになった人に教えを請いに行った話
第3話: 空き家マッチングシステムをシコシコつくりあげた話
第4話: グッドパッチさんにデザインUIの助言を貰いにいったけど、それ以前のレベルだった話
ユーザー調査のため移住イベントに潜り込む
前回グッドパッチさんからの助言で、デザイン・UIを考える上で一番重要なのは、ユーザー調査であることを学んだ私。
早速東京で行われた広島県主催の移住イベントに、ユーザー調査を兼ねて行ってみることに。
家を探すのは最終段階?
しかしそこで分かったのは、空き家探しは移住において最後のプロセスだったということ。
具体的には下記の通り。
①広島に興味を持つ
↓
②合う仕事を探す
↓
③当該地域で家を探す。
そしてこの②合う仕事を探す段階で、9割以上の人が諦めてしまうようです。
むっ、ということは
- 空き家の探しの前段階も考えないといけないんじゃない??
- けど東京じゃなくて広島在住者なら話は違うかも。
- てか空き家の家主のことも調査しないといけないし・・・
うーん、一体なにを最優先に取り組んでいけばいいのか分からなくなったどー!!
1年前にオフ会で使ったあるシェアリングエコノミーサービス
そんな迷える子羊状態のアタマに、ふと浮かんできたのが、およそ1年前に使ったとあるサービス。
当時運営していたブログのオフ会を開催した際に使ったスペースマーケットです。
▲当時借りた四谷にあるマグノリアのカエル
オフ会の様子
貸し会議室よりも安価な値段でユニークな場所を借りることができました。
うーん、よく考えるとスペースマーケットと空き家クエストは、使われていない余剰スペースを使うという点で似ているなぁ。
こういったシェアサービスをつくる上での勘所ってなんなんだろうか??
というわけで、話を伺いに実際に行ってみることにしました。
話を聴くのはCTO
今回お話を聴くのは、CEOの重松さんではなく、スペースマーケットのシステム骨格を作ったCTOの鈴木真一郎さん。
▲草食系の風貌
1979年 東京都生まれ
2003年 早稲田大学卒業
2003年 NTTインターネット株式会社入社
2005年 ヤフーに転職、後リクルートメディアコミュニケーションズへ
2011年 株式会社スポソン設立
2014年 株式会社スペースマーケット共同創業
システム面でどんな工夫があったのか聞いてみましょう。
借り手と貸し手どっちが大事??
まず今私自身が一番悩んでる課題を聞いてみました。どこから手をつければいいんでしょう??
マッチングサービスには2種類のユーザーがいます。
スペースマーケットの場合、
・借りたい人
・貸したい人(物件)
どちらの開拓を当初注力されたんですか??
まずは商品を揃えないと人は来ないですよね。 というわけでまずは100スペース集めることにしました。
いやーなんとなくですね(笑) 人に説明するとき50よりも100の方がおおっ! て思われやすいのかなと思って。
CEOの重松の伝手を中心に、まずは100集めることに注力しました。
たしかに賞金も50万円よりは100万円のほうがインパクトあるしなぁ。
江田島をはじめ、全国各自治体の空き家バンクに登録されている物件数って大体20-30軒程度。
そこを100軒と打ち出せるとキャッチーですね。
サービスははじめからつくりこんでいた?
前職メーカーだったからか、ちゃんとモノを用意しないと物事は進められないという意識があるのですが、スペースマーケットではどうだったんでしょうか?
物件の家主に納得してまわるにあたって、サービスは作り込んでいたんですか??
その時は紙芝居ベースでサービスの概要だったり、ぼくたちのビジョンを伝えていました。
作り込みは後ですね。
なるほど、システムは作り込まなくとも物件開拓作業はできるんですね。
実際のシステムはスクラップ&ビルドを繰り返してつくっていったんですか??
仕様変更や汎用性が効きやすいように、必要最小限の機能開発からはじめて、そこからどんどん機能を積み上げていく形を取りました。
スマホアプリにつながるAPIも機能がまとまり始めてから作ってます。
サービスの骨格をある程度つくってから各方面に営業をかけるよりも、後工程にしたほうが手戻りが少なくて効率が良いんですね。
どうやって物件オーナーを集めていったのか?
空き家が流通しない最大の要因は家主の見ず知らずの人に出したくないという意向。
ここを越えていくのは非常に高いハードルがあると思うのですが、スペースマーケットの場合はどのように工夫していったんでしょうか?
しかしはじめ100件からスタートし今では1万件以上まで成長されてますが、
この物件開拓のポイントってなんだったんでしょうか??
人の所有物を見ず知らずの人が借りるシェアリングエコノミーって信頼が大事ですよね。けど信頼というのは目に見えない。
そこで信頼性の可視化できないかと考え、レビュー機能を実装しました。
けどこれ、半年で10件しかレビューがつかなかったんですよ。
半年で10件だとちょっと少ないですね・・・・。 そこでどんな打開策を??
誰でも自由にレビューをつけられるルールが良くなかったのかなと思い相互レビュー方式にしました。
ヤフオクの入札者・落札者による相互評価の形ですね。
また、期限を設定しました。やはり人間期限がないとズルズルと後回しにしてしまいますからね。
相互レビューというのはイメージできるんですが、レビューをつける起点がちょっと分からないです。
例えば借りた人がレビューをつけても特にメリットはないですよね。
まず起点の一つとしては物件オーナーから書いてもらうというパターンがあります。
人ってなにかやってもらったら返そうとする返報性の法則ってあるじゃないですか。
だから物件オーナーが借り主のことを評価したら、借り主も物件のことをちゃんとレビューしてくれます。
その蓄積が積み重なって掲載スペース数が3,000を超えた頃になると特に物件を開拓しなくとも増えていく自然成長段階となりました。
なるほど。物件オーナーがきちんと借り主をレビューしてくれたことの蓄積がスペースマーケット拡大に大きく寄与しているんですね。
でもオーナーの皆さんよくレビューを書いてくれましたね。
そこがとても重要なところで、はじめの100物件を開拓するときには、オーナーにスペースマーケットのビジョンを熱く語りました。
ビジョンや熱が伝わっていないと、オーナーさんはレビューを書いてくれなかったと思います。
そうか、1年前スペースマーケットを使ったとき、いつのまにかレビューを入れてしまったけど、この設計思想にうまく乗っかっていたということか・・・
▲当時スペースマーケットを使った時に書いたレビュー@マグノリアのカエル
完成度の高いシステムさえ作ってしまえば自然とユーザー数は増えるものだと思っていたんですが、土台には人と人との信頼関係の構築という泥臭い作業があったんですね。
そう考えると、空き家クエスト、まだまだ泥臭さが足りないなぁ。
どのような形で事業に誘われたのか?
優秀なエンジニアに参画してもらいたい場合、何があれば来てくれるんでしょうか?
やぱお金なんですかね。聞いてみました。
そもそもの話なんですが、(鈴木)さんはどういった経緯でスペースマーケットを共同創業されたんですか??
Yahooをやめて、自分でスマホアプリの開発をする会社をしていたのですが、一過性のブームに左右されて積み上げがなかったので、違うことをしてみたいなーと思ってたんです。
で、私の会社に出資してくれていたベンチャーキャピタリストが実は重松の奥様だったのですが、その縁で重松と意気投合しました。
CEOの奥様がキューピット。なんか不思議な縁(笑)
スペースマーケットのビジネスモデルなら物件やユーザーがどんどん増えていくストック型なのでちゃんと積み上がっていきますもんね。
そういった諸々の条件がうまくマッチしたんだと思います。
事業計画は3人でブレストしたりしながら詰めていきました。
CEOとCTOの役割分担
重松は営業のバックグラウンドがあったのでひたすら物件を開拓
私は裏でひたすら作るということを行ってました。
1人でですよね?? なんだかすごく心が折れそうになるような気がするのですが大丈夫だったんですか??
本当に自分のやってることは合ってるのかなという葛藤はありましたよ。
それにやらなければいけない作業量が圧倒的に多かった。
けど会社員時代からいろんなプロジェクトをやり切った経験があるので、必ず最後までやりきって形にできる自信はありました。
モチベーションの源泉
とはいえですよ、サービスがリリースしてなくて収益が上がってこない状況ってとても不安だと思うんですか、モチベーションの源泉ってなんだったんですか??
重松さんからバーンと高い現金積まれてたとか??
まぁ失敗しても職があるのがエンジニアですからね。
お金の面についてはそこまで考えていませんでした。
それよりも・楽しいこと・世の中に影響を与えられることの方が大事でしたね。
これはぼくに限らず、実力のあるエンジニアほど、その傾向があるようです。
失敗しても職がある。エンジニアとはなんと最強の職業なんだろうか・・・。
エンジニアの採用について
空き家クエストは仕様やユーザー調査がまだ固まっていないので、エンジニアの採用なんて雲を掴むような話なんですが、スペースマーケットの場合はどうだったのか聞いてみました。
事業拡大していくにつれて、いつまでも(鈴木)さん1人では手に負えなくなってくると思うんですが、
どのようにエンジニアを採用していったんでしょうか??
サービスローンチ後2ヶ月で前職ヤフーの後輩を1人スカウト。
その後スマホアプリを出すタイミングでWantedly経由でアプリエンジニアを1人採用しました。
しばらくはこの少数精鋭体制で進めていましたね。
そして2016年に7人増員しました。なので今現在10人ですね。
もっとエンジニアの方がいらっしゃるのかと思ってました。
まずは信頼できる人で基盤を構築し増員されたんですね。
採用にあたっての基準って何ですか?
「挑戦する人を増やす。世の中をおもしろくする」 が会社のビジョンなのでそれに共感してくれる人が第一ですね。 それに加えて向上心がどの程度ある人なのかも注視します.
けど向上心を見極めるのって難しくないですか?? 口ではなんとでも言えますし・・・。
そうですね、面接だけでは判断できないので1日インターンしてもらいます。
そこで仕事の仕方や書いてるコードのロジックを見ればなんとなく筋があるかどうかは分かるんですね。
あとポートフォリオはもちろん見ます。
採用に関してはかなりこだわってらっしゃるんですね。
けど向上心を第一としてしまうと、スキルにバラツキがうまれそうな気がするのですが大丈夫なのですか??
未経験からだと育成コストもかかってしまいますし・・・
むしろスキルにバラツキ・多様性がある事をチームの活性化につなげています。
入社してから日が経いなくてスキルが浅い人の場合、まず入りとしてバグ修正などの小さな改善作業からやってもらう事が多いです。
バグ修正ってそうしたスキルのまだ浅い人にとっては、仕様の理解も深まりますし、最高の勉強教材になるんです。
一方熟練者としては細かな改善を任せることができることで、大きなサイクルのタスクに集中して取り組めたりします。
自然と需要と供給のバランスが良くなるんです。
あと、スキル浅い人が必死になってキャッチアップしようとする姿は、下からの突き上げとなってベテランエンジニアを刺激させてくれるんです。
あぁ、俺も昔はあんなにガムシャラだったんだな。もっと頑張らなきゃなって。
(前職の年功序列組織では、下が殆ど入らず永遠の最若手だったんですが、たしかに下からの突き上げプレシャーはなかった・・・。)
ポートフォリオを見てもらう
あのー大変恐縮なのですが、つくった空き家クエストのポートフォリオをご覧いただけますでしょうか??
トップページ
空き家を開拓していく=冒険のイメージを想起させるためです。
江田島のカメラマンさんにカッコいい写真をお借りしました。(ドヤァ!)
ええと・・空き家のサービスサイトならば、空き家の写真のほうが良いですね。説明しないと分からない状態は極力避けたほうがいいでしょう。
あと、TOPページから一覧画面にジャンプするのではなく、トップページのすぐ下に物件一覧を表示させたほうが遷移がスムーズかと思います。
お宝を探すボタンについて
この物件一覧ページに飛ぶジャンプボタンですが、なぜ"お宝を探す"なのですか??
空き家 という言葉はネガティブなイメージを抱きやすいのですが、人によっては格安で手に入る宝の山。
ワクワク感を持って前向きに向き合えるような想いをこめてその文言を盛り込みました。
なるほど・・・。ただワクワク ・ お宝 という言葉は曖昧ですね。説明しないと意図がわからない。 もうちょっと具体的なコピーの方が響くと思います。
軸としては 目的 × やること
あまりない組み合わせだとフックになりやすいですね。
例えばスペースマーケットの場合は
"球場で社員総会"
というコピー。
これで具体的な利用イメージをインパクトある形で伝えられます。
球場で社員総会
古民家で会議
電車でパーティ
(出典:webアーカイブスから引っ張ってきた2015年当時のスペースマーケットTOPページ)
空き家の場合だと
「空き家で空き家でオフサイトミーティング」
とかですかね。
あと、この一覧ページにジャンプするボタンですが、文字以外の部分をクリックしてもジャンプしませんね・・・
画像について
いえ、ひとまず空き家バンクの掲載画像を流用しています。
写真はこだわったほうが良いですね。ぼくたちもはじめはこだわって撮りに行ってました。
あと画像はトラフィック増に耐えられるクラウドサーバーに置いたほうがいいですね。後々リプレイスすることになると、手間がものすごく大変なので。
画像はherokuにあげると消えちゃうというウワサをきいたので、ひとまず安いレンタルサーバーに乗せちゃってました・・・。
物件検索について
物件が増えてくると、閲覧性も求められてきます。 今は掲載物件がページネーションなしで全部出ちゃっていてちょっと見にくいですね。
またキーワード検索機能があるといいですね。
早く検索結果が反映されるようインデックスを貼ると良いでしょう。
あとメッセージ機能はリアルタイム感が出せるとより円滑になるでしょう。
仮に応募したら採用されるのか!?
最後とんでもない質問をぶちこんでみました。
もし、エンジニアとして応募した場合、スペースマーケットさんで採用される見込みはいかがでしょう??
えぇと・・・ちょっとソースコードをしっかり見て検討しますね。
まとめ
というわけでスペースマーケットのCTO(鈴木)さんに話を聞いてきたのですが、繰り出される言葉が的確すぎて何も返せませんでした・・・。
サービスをつくり起動に乗せていったエンジニアとはこうも凄いものなのかと彼我の差を目の当たりにしてしまった(片岡)。
そしてスペースマーケットへの転職という保険がソフトに断たれてしまった(片岡)。
はたしてこの物語にハッピーエンドはあるのか??
今日の一句
"終わらない キラキラしてない 物語"