- 更新日: 2021年11月26日
- 公開日: 2018年01月12日
獣害に悩む猟師がディープラーニングを利用したクマ警報システムについて聞いてきた!
初めまして。ライターの岸本です。
僕は普段、滋賀県で猟師をしています。頻繁に間違われるのですが海ではありません。山で鹿や猪を狩る本物の「猟師」です。
普段の姿はこんな感じ。
最近、全国的に鹿や猪による農作物被害が非常に多く困っています。
例えばこちらの画像。
せっかく植えた作物に猪か鹿が侵入し荒らし回った跡です。 彼らは生まれてこの方一度もお風呂に入ったことがないので非常に「臭い」です。
侵入されてしまうと荒らされた付近の稲などはもう、売り物にならなくなってしまいます。
柵をしようにも、柵の設置費用や人件費、補修費などを考えると利益率が低い農業の割に合うはずもなく、「獣害を原因に農家を辞める」人が増え、地方農家の後継者問題は加速するばかり。
そんな時、小耳に挟んだ「クマの被害を抑えるためにディープラーニングでクマを検知する仕組みを開発する人たちがいるらしい」という話。
と思ったので実際に東京へ取材してきました!
獣害に悩む猟師がディープラーニングを利用したクマ警報システムについて聞いてきた!
伺ったのはITコンサルティング会社で東証一部上場企業のフューチャーアーキテクト株式会社。
グループ会社には東京カレンダー株式会社や、当メディアを運営しているオンラインプログラミングスクールのコードキャンプ株式会社など幅広い領域で事業を展開しています。
オフィスに入ると、、、
お話を伺った方々
今回は3名の方にお話を伺いました。
左から順に
久保です。よろしくお願いします。自然言語処理が得意です。
よろしくお願いします。元々大学では機械学習をやっていました。猟師が来るって言うから身構えてたんですけど案外普通の格好なんですね笑
よろしくお願いします。インフラ系が得意です。
ディープラーニングとは何か?
今回岸本が事前に知っている情報は
「クマの被害を抑えるためにディープラーニングでクマを検知する仕組みを開発する人たちがいるらしい」ということだけ。
と思った僕は事前にディープラーニングについて学習していきました。
【ディープラーニングまたは深層学習(英: deep learning)とは、多層のニューラルネットワーク(ディープニューラルネットワーク、英: deep neural network)による機械学習手法である】
とのこと。
ディープラーニングを初心者に優しく説明ですか。結構難しいのですが、たとえば従来の画像認識技術は人間が画像の特徴を機械に教える必要がありました。それに対して、ディープラーニングは機械が画像の特徴を勝手に判断してくれる優れた機能を持った技術です。
ある画像の特徴を機械にインプットして、一定量以上の特徴が見つかったら「この画像は○○さんです」というのが従来の画像認識。
例えば、子供会のお菓子の量を画像認識を使ってカウントしたい場合に使われます。箱に入ったお菓子のある特徴を機械に教え込み、それが何個あるかによってお菓子の量を数えてくれるという感じ。
対してディープラーニングを使った画像認識は、勝手に特徴を判断し、お菓子の量を数えてくれるのが特徴。
人間からみたお菓子の特徴が「○○という文字が絶対にある」というのに対し、ディープラーニングは「○○という文字よりここの特徴の方が分かりやすいぞ!」と学習データに基いて判断してくれるため、人間では気がつくことのできない特徴に気づきお菓子の量を数えてくれたりするんですね。
皆さんもFacebookやGooglePhotoに写真を上げた際【この人は○○さん?】とタグ付けが表示された経験はありませんか?あの機能の様にディープラーニングを使った画像認識はどんどん進化しており、犯罪者の画像が一枚あれば日本全国あらゆる防犯カメラから一瞬で犯人が通った場所を割り出し、迅速に逮捕できるような未来がくるかもしれませんね。
もっと詳しく知りたい方のために、こちらの記事にまとめていますのでご覧ください。
クマをディープラーニングして被害を防ぐために
地方創生をテーマとしたチーム開発研修の中でディープラーニングに取り組みました。実際はクマが出る地方で実験を行ったわけではなく、クマに見立てたリラックマをディープラーニングして警報を鳴らすという装置の開発でしたが。
なかよくごはん。 pic.twitter.com/goAnyY1XaL
— リラックマごゆるりサイト【公式】 (@rilakkuma_gyr) 2017年12月18日
はい。リラックマです。本物のクマを扱うことは、非常に危険が伴うため今回はリラックマで代用しました。
ざっと200枚、5秒毎に様々な角度でリラックマの人形を撮影して収集しました。撮影の合間に僕らが通って変化をつけたりしましたね。ディープラーニング用の画像としては少なく済んだほうだと思います。
200枚で済んだ理由は、リラックマ自体がかなり特徴的な色(明るい茶色)で、同じような色の服を着た人間がいない限り、精度100%で認識できてしまったからです。
その通りです。ちなみに今回リラックマで行った警報システムの名前は「クマんない」といいます。
クマを検知するシステムは本当に実現できるのか?
実現するための機会があればチャレンジしたいですね。ただ、システムを実現するために本当にディープラーニングを使うべきか?他の方法でもっと効率よく実現できないのか?を検討する余地はまだまだあると思っています。
あとは人命に関わるシステムなので、どのくらいの精度であればクライアントは納得するのか、コストに対する見返りはどの程度期待できるのかなど、実用レベルでどれくらいのものが求められるのか知りたいですね。
以前当ブログで公開した66歳からプログラミングを始め、自作の罠で年間90頭の猪を狩る猟師がいるらしいではイノシシの赤外線センサーを使った罠の作動システムを紹介しましたが、クマを検知する警報装置は聞いたことがないので、興味を持つ役場の方もいるかもしれませんね。
これからディープラーニングを学びたい人は何から始めればいいか?
率直に猟師の観点から言うと、人手をかけずにシカやイノシシの害から地方の農業被害を抑えるためには、今回のようなテクノロジーを利用するべきだと思っています。これからディープラーニングを学びたいという人は何から学習を始めればいいと思いますか?
正直、初心者がいきなりディープラーニングを「さあ学ぶぞ!」と発起しても難しいかなと思います。大前提として、ディープラーニングを理解するためには数学の理論を知る必要があるので。しっかり基礎から身につけたい方は数学の理論を抑えてから、技術的な問題に入っていくのが良いかなと思います。
僕もアンドリューと同じ意見で、数学系の勉強(線形回帰・回帰分析など)が大事だと思います。他にはそもそも自分が解決したい問題に対して、画像認識やディープラーニングを使う必要があるのか?など、自分が取り掛かれる範囲の学習から取り掛かっていってトライ&エラーしていくのが良いと思いますね。
僕、数学がかなり苦手だったのでディープラーニング学習も相当苦手になりそう。
日本の地方をシカやイノシシの獣害から守るために
ディープラーニングについてほとんど知識がない状態でいきなり訪れたのですが、丁寧に教えていただきありがとうございました!
こちらこそありがとうございました。
日本の田舎で、シカやイノシシによる被害を身近に感じている僕としては、テクノロジーをどう活用していくべきか非常に勉強になりました。
日本の田舎風景は、ほんとうにキレイです。
都会でみることのできない朝日や夕陽
田植え前の青々とした田んぼや収穫前、黄金に輝く田んぼ。
新緑生い茂る山や、雪深い山
なにより田舎の暖かい人が、日本の宝だと僕は思います。
そんな田舎の笑顔がシカやイノシシに踏みにじられてしまう。そんな未来が予見できてしまうほど苦しんでいる。そんな状況が日本の様々な田舎で起きています。
古典的な狩猟だけに頼らず、この記事がテクノロジーの活用を考えるキッカケになれば幸いです。
- この記事を書いた人
- CodeCampus編集部