- 更新日: 2018年03月10日
- 公開日: 2018年03月05日
アウトプットしない「図書館」にはなるな- 新CTO 金子氏が考えるエウレカで活躍する人材とは
”非エンジニアが聞く「エンジニア採用」のリアル”の第9回目は、株式会社エウレカ
取締役CTO 金子慎太郎さんへのインタビューです。まさかの入社からエンジニアが今後身につけておくべきスキル、成長プロセスまで多岐にわたるお話をお聞きしました。ぜひお読みください。
金子慎太郎さんプロフィール:
株式会社エウレカ 取締役CTO
2010年、東京理科大学理学部を卒業後、組込系企業に入社し品質保証に従事。2011年、カナダ留学。帰国後、東京理科大学の研究室OBとして最適化理論の研究に携わる。2012年、株式会社エウレカに入社。「Pairs」および「Couples」の立ち上げメンバーとして開発に参画。2017年10月、取締役CTOに就任。
【サービスぺージ】Pairs公式サイト:https://www.pairs.lv/
偶然から始まった入社と「Pairs」との関係
-- 本日はよろしくお願いします。それでは、早速今の業務について教えていただけますか。
エウレカは2008年の11月に創業しました。創業当時からメディア事業や広告代理事業、受託開発事業と事業変遷をしてきましたが、いつか自社事業をやりたいという創業者二人の思いから、恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」をリリースして、さらにカップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」も運営しています。
-- どういった経緯で入社されたんですか。
実は、2012年10月、Pairsの日本版がローンチした日が私の入社日なんです。
と言っても、Pairs担当で採用されたわけでもなく、面接でもそんな話は出なかったので、本当にたまたま担当になったという感じです。
前の会社は希望退職者を募っていた時に辞めて、カナダへ留学しました。
前職でやっていたような組み込み系ではなくすぐ近くにユーザーがいて触ってくれるサービスに携わりたいと思っていたので、留学中はPHPやweb系の言語を覚えて不動産サイトの構築などをやってました。
帰国してからは個人でアプリの開発もしていたんですが、そろそろ仕事しないとお金が無いなとなってきて(笑)
それで、学生時代の居酒屋でのアルバイトが楽しかったので、まずそっちに応募したんです。
-- エンジニアではなく飲食のアルバイト応募だったんですね。意外です。
ただ、お店から連絡がこなくてどうしようかなと思ってたところに、エウレカの採用サイトが目について、そこから入社しました。
もし、居酒屋からの連絡がすぐきていたら、今ごろ店長をやっていたかもしれません(笑)
--それも出会いの一つですね。入社当時はどんな体制だったのですか。
今はエウレカ全体でエンジニアが50名弱いますが、Pairsをリリースした当時はPairs担当のエンジニアは2人だけで、私が3人目でした。
サービスの立ち上げ方からグロースハックで成長させるフェーズ、ブランド認知のフェーズと色々な場面に立ちあう中で、マネタイズやビジネスというものへの理解が深まったように感じています。
エンジニアも数字への執着とビジネス感覚を身につけるべき
--もともと、数学の研究をされていらっしゃったんですよね。ビジネスとアカデミックは、どちらかというと相反するもののように思います。
私もエウレカに入るまではマネタイズの知識はありませんでした。
今はビジネスアイデアや施策の影響範囲について会話ができるようになっていますし、マネタイズの意識もしています。
これは「事業が成長するからこそ新しいことがやれる」という思いがあるからです。
普段から周りにも思いを伝えていますし、採用でもビジネス観点を持っている人かどうかはみています。
新しい技術を使うにも会社が成長していることが重要なので、一緒に働くメンバーは長期的な観点からどうやってサービスを伸ばしていくかを考えられる方がいいですね。
--エンジニアに対してもビジネス感覚を求めるということでしょうか。
数字の検証をする、数字への執着を持っていることが重要だと思っています。
Pairsのエンジニアは、「自分の領域をみるだけ」ではなく、新規登録から出会うまでの一連の流れに対して責任を持っています。
もともと、私がエウレカへ入社した時から「数字を見る」という文化はありました。
といっても、その当時は売上とDAUや新規獲得数値ぐらいを見る程度です。
事業が大きくなるにつれて細分化していき、今は細かく数字を追うようになっています。
CTOの管掌範囲には、BI、SRE、QA、CTO室といったチームがあるのですが、そのうちBIチームでは感覚でこういうものかなと感じていることをデータで裏付けたり、データから課題を発見するような活動をしてもらっています。
アウトプットのない「図書館」にはなるな
-- 作った後の意識を強くもたれているんですね。採用に関してはどのように関わっていらっしゃいますか。
私は採用戦略の意思決定をしています。
採用戦術も一部は見ていますが、主にマネージャーとCTO室に立案してもらっていて、採用するマネージャーやリーダーも責任を負っています。
採用戦略については、CTOとして事業計画を元に一年後にどういう人が必要になっているかを考えています。
一年後に事業として成長していくためには今これをしてないといけないというものを考え、そこに必要な人が足りなければ採用しますし、新しくチームが必要ならそれを作ります。
--オンラインデーティングサービスはたくさんのデータからマッチングさせる、ビッグデータの要素もあり、トレンドの一つだと思います。具体的に一年後にはどんな状態を想定されているんでしょうか。
技術的な話からいうと、今言われた「データ」はアウトプットのイメージから逆算し、利用価値がある状態でためていく必要があります。
取るべきデータはたくさんあります。
ただ、保存した後にどう活用するのかというところまで考えて、リアルタイム性がある情報や欠損がなくゴミデータが混ざっていない綺麗なデータを蓄積していかなければいけません。
保存するだけでは、使うことができないんです。
-- 入り口の設計が重要なんですね。
そうです。
そうして蓄積していった綺麗なデータも、量が多くなると計算量が多くなります。
マッチングサービスは即時性も重要です。
どんなに高いマッチング精度であっても、結果がわかるまでに数時間、数日かかってるようではダメです。
今後はそういった課題解決に向けて、高いエンジニアリングスキルを持った人材にAIや機械学習のモデル構築までトライしてもらうことも必要かもしれません。
--AIや機械学習、深層学習といったスキルを持つ人材というのはますます重要になってきますね。弊社ではプログラミングスクールを運営していますが、エンジニアを目指す上で心がけておくことはありますか。
まず、最新技術のキャッチアップは絶対に必要です。
そしてインプットして満足するのではなくブログでもコーディングでもいいからとにかく出すこと、アウトプットしていくことです。
厳しい言い方ですが、インプットしただけだとただの「図書館」になってしまいます。
いろんなことを勉強していくのは前提として、情報をしっかりアウトプットしていくことが大切ではないでしょうか。
--溜め込むだけではなく、アウトプットが重要だと。では実際にコードを書くうえで注意されていることはありますか。
設計レベルでいえば「この設計思想にすると理想だよね」というラインはもちろんあるべきですが完璧を目指しすぎると完成しないので、理想は理想として掲げた上で、まずは愚直に書いてみるスタンスをとっています。
書きながら、改善を重ねるほうがいいと考えています。
ただ、いきなり書くよりはまず「8割考えて2割コーディング」ぐらいの割合で頭で考えるかノートに書いて全体像をふまえておくことをすすめています。
これは数学をやっていたからこその、思考様式なのかもしれません。
証明も最初から手を動かすことはしないので、数学の証明問題を解く思考様式が染み付いているのかも(笑)
CTOとしての強み、エンジニアが強みを持つことの大切さ
-- 思考様式が染み付いているとおっしゃいましたが、大学では具体的にどういった研究をされていたんですか。
最適化問題と理論に取り組んでいました。
例えば、男性と女性の目的関数として「マッチング」があるとしたら、相手を選ぶ様々な条件を制約式として用意するのが最適化問題です。
-- 偶然とは思えないほど、今の事業にぴったりの研究内容ですね。
日本のCTOはインフラ出身の方が非常に多いんです。
それは、インフラというコストへの意識を常に持っているからだと思います。
ただ、私個人で言えば、インフラよりも数学をやっていたということが強みになっています。
先ほど言った、機械学習、深層学習、人工知能は全て数学の知識が必要です。
数学ができるというのは偶然ですが、そういう素養を持ったCTOはあまりいないと思うので、他にない自分だけの強みだと思っています。
--ビジネスとアカデミックを合わせ待つのが他にない強みだと。今エンジニアとして働いている方へ、キャリアアップを目指す上でのアドバイスはありますか。
ミドルエンジニアからシニアやその上を目指すには、何か一つ、深い知識とスキルを身につけなくてはいけないと思います。
例えば、今フロントエンドは様々な技術が発展していますが、全部一斉にかじるのではなくどれか一つでも良いのでスキルを深め、極めることが大切です。
極めたうえで、他のスキルと比較しながら学習をすることで横に展開しやすくなります。
水平展開できるようにするためにも深いスキル、しっかりとした基礎が重要です。
-- それは「T字型人材」と呼ばれるような状態を目指すべきということでしょうか。
そこはホワイトボードに書いてご説明します。
この人材アプローチの考え方は、若手に対して以前から話しています。
繰り返し話すので、資料にまとめたのですが、後でお渡ししますね。
(注:ホワイトボードを使い説明する金子さん)
(注:ホワイトボードへ描かれた図)
(注:インタビュー後に送付いただいた資料から抜粋。資料には①ジュニア②ミドル③リードごとにどのような行動を取ればいいかが詳しく書かれており、しっかりとアウトプットしていることがわかる)
-- 詳しいご説明ありがとうございます。ジュニア、ミドル、リードそれぞれのステージでの違いを意識していくことの重要性がよくわかりました。
-- それでは次回の方のご紹介いただけますか。
次は株式会社Gunosyの松本勇気さんをお願いいたします。
— 本日はありがとうございました。
ありがとうございました。
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