- 更新日: 2017年09月26日
- 公開日: 2017年05月18日
66歳からプログラミングを始め、自作の罠で年間90頭の猪を狩る猟師がいるらしい
こんにちは!Tech2GO編集部の岸本です!
皆さんは「猟師」と聞いてどんな印象を持っていますか?「田舎」「銃を撃って鹿や猪を狩る」「本当に猟師なんて存在するの?」などでしょうか?
実は私も滋賀県で猟師として活動しながら本メディア「Tech2GO」にて勤務しています。猟師がIT系の会社にいるなんてびっくりですよね。ちなみに普段僕は鹿を狩っています。
↓こんな感じです。
そんな、普段出会うことの少ない猟師が「Ichigo Jamを使った獣用の箱罠を自作」し成果を上げていると聞き、シニアプログラミングネットワーク #1に登壇されるとのことで滋賀から東京まで行ってきました!
「ichigojam」とは、子供向けの安価なプログラミングが可能なパソコンのことです。
谷川さんの自己紹介
所持している資格は測量士と第一種猟銃免許。銃です。それと罠免許を持っている猟師です。
と、プログラミング系のイベントに来たのを疑ってしまう自己紹介から谷川さんの講演は始まりました。会場もザワザワしていました。
箱罠開発の経緯
谷川さんの住まいがある福井県勝山市では、猪による獣害が酷いそう。獣害というのは、猪や鹿などの野生動物に畑や田んぼを荒らされることです。
猟師の減少により獣の数は増える一方で、獣害による被害は日本各地で増え続けています。
収穫前のコシヒカリの田んぼに猪が入ると臭いが付着し商品にならない。せっかく頑張って育てた作物も獣にやられてしまう。じゃあもう農家を辞めよう。という人が増えています。
獣害のない地域に住んでいると分からないことだと思いますが、獣害のある地域にとって獣害は死活問題なんです。私も野菜を育てているのですが、収穫直前のトマトを猿に食べられたり、とうもろこしをカラスに食べられたりしました。
猪を減らす方法
では、何故従来の箱罠で猪を獲るのではダメなのか?それにはこんな背景があります。
猪は毎年5,6頭の子供を産みます。なので、いくら子供をとっても減りません。いかに成獣を獲るかが鍵になるのです。
猪の繁殖力は非常に強い動物で、かつ成獣の猪は非常に警戒心が強く従来の箱罠にはかかりにくいのです。
それでは実際に、現在の箱罠ではどんな問題があるかみてみましょう。
従来の箱罠の仕組み
箱罠には大きく分けて2種類あります。罠の奥に餌があるのは2種類とも同じですが、1つは猪がワイヤーに引っかかったら、もう1つは猪が箱罠内の板に脚を乗せると作動します。
大体どの地域の箱罠もこの2種類で罠を作動させ猪を捕獲します。しかし、先程谷川さんが言っていたように、成獣の猪は非常に警戒心が強く、ワイヤーや板が箱罠の中にあると簡単に捕まえることができません。
また、嗅覚が異常に優れており人間の臭いがする物体があると異常に警戒心を高めるのです。そこで谷川さんは閃きます。
そうだ!箱罠の中に餌以外何もない仕掛けを作ろう!
この閃きから実際に赤外線センサーを用いた箱罠制作に取り掛かるようになったそうです。
実際の箱罠の作成手順
ここからはどのように箱罠を制作していったかをご紹介します。
まずどのセンサーを使うか考えたそうです。
超音波センサーだと猪の耳に聞こえる可能性があるので赤外線測距センサーにしよう!
猪の耳にどの程度の超音波が聴こえるか、試験データは現在の所ないそう。以上のことからセンサーは猪に気づかれにくいと思われる赤外線センサーに決定。
赤外線センサーは価格も安く捕獲装置への応用も可能だと考えられたそうです。
赤外線センサーの課題
そんな赤外線センサーの課題は「電池の消費」にありました。
モーターを作動させたままでは電池が1日しか持たない。
こちらは動体検知センサーをつけることで、猪が近づいた時に赤外線センサーが作動するようにし、電池消費の問題をクリアにしたそうです。
Ichigo Jamとの出会い
谷川さんの暮らす福井県勝山市には、PCN勝山クラブという子供向けのプログラミングを主に行っている団体があったそうで、実際に入会し学び始めたそうです。
8/19にプログラミングを始めてから箱罠につけて動作確認を行うまでわずが3週間弱という爆速での実装。
PCN勝山クラブの先生のように、実際にプログラミングを教えてくださる方がいたというのは非常に心強かったです。
と言っていました。
IchigoJamを使って作成されたセンサーは、小動物や木の葉などが箱罠に入っても作動しないような仕組みになっているそうです。
装置を取り付けた後の効果
装置を取り付け、すぐに上記写真の様な効果を出したそうです。また、勝山市で65基の罠が仕掛けられているそうですが、谷川さんの作った装置を取り付けた罠6基で勝山市全体の36%の猪を捕獲したそうです。
すごい効果ですね。
上記画像をご覧いただければ分かると思いますが、年々猪の捕獲数が増えています。しかし獣害による被害額は増える一方。
谷川さんの件を見て、単純に猟師を増やし獣害を減らすのではなく、ITを駆使した捕獲などを行わなければ、農家をやめる方がどんどん多くなる一方だと強く感じました。
谷川さんの今後
今後は猪が罠にかかったら自動でメールが飛んでくる装置を作りたいです。現時点でほぼ完成しています。
実は、罠を仕掛けている人は「毎日」見回りに行くという努力義務があります。6箇所も罠を仕掛けてしまったら毎朝6箇所見回りに行かないといけないのです。
仕事があっても雨の日でも雪の日でも見回りに行かないといけないのは相当時間を取られます。これでは罠を設置する人も増えません。
そこで、猪が掛かったらメールでお知らせしてくれる機能を開発中とのこと。しかも現時点でほとんど完成しているそうです。すごいですね!
\Webサイト担当者としてのスキルが身に付く/
まとめ
「猟師がIchigo Jamを活用して猪を狩っている」
最初この言葉を聞いた時は信じられなかったです。しかも谷川さんは67歳。それほどまでに猪の被害がすごく、どうしたらいいのか悩んでいたのでしょう。
そんな時に出会った「Ichigo Jam」が獣害に悩む地域に劇的な変化をもたらしたのです。今後もシステム改良し、獣害に悩む日本の里山を猪や鹿などから守ってくれる様なシステムができたらいいなと思いました!
前回の記事はこちらです:82歳にしてSwiftでアプリ開発からリリースまで行った、スーパーシニアがいると聞いてお話を伺ってきた!
今回のイベント概要:シニアプログラミングネットワーク #1
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- CodeCampus編集部