子供達が楽しんで取り組める「プログラミング教育」とは?【G7プログラミングラーニングサミット2017東北~】

子供達が楽しんで取り組める「プログラミング教育」とは?【G7プログラミングラーニングサミット2017東北~】

3月18日(土)楽天株式会社仙台支店を会場に「G7 プログラミングラーニングサミット2017東北」が開催されました。これは、主に小学生向けのプログラミング教育・学習ツールを比較検証する調査で、早稲田大学グローバルソフトウエアエンジニアリング研究所と株式会社フジテレビKIDSの産学共同プロジェクトです。

目次
  1. はじめに
  2. 「G7 プログラミングラーニングサミット」の取り組みとこれからのプログラミング教育について
  3. 今の小学校プログラミング授業の現場は?― 松田孝校長先生のお話
  4. 体験コーナーで紹介されたプログラミング学習ツールと各団体について
  5. まとめ:プログラミング教育の未来

はじめに

2020年の小学校におけるプログラミング教育必須化をうけ、どのような学習ツールや教材を使って、どういった教育方法が子供達にとって効果的であるかを知る必要があります。この取り組みは、小学校の教育現場はもとより、学習教材を研究開発する企業にとっても、重要な研究結果といえます。

G7 プログラミングラーニングサミット」では、あらゆるプログラミング学習ツールを、小学生に体験してもらい、各ツールの特性や効果を具体的にグラフ化し公開しています。2016年11月に早稲田大学西早稲田キャンパスにおいて、第1回目の「G7 プログラミングラーニングサミット」が開催され、今回は2回目の調査です。

「G7 プログラミングラーニングサミット」実行委員会会長で、早稲田大学グローバルソフトエンジニアリング研究所所長・教授の鷲崎弘宣先生に、お話を伺いました。

「G7 プログラミングラーニングサミット」の取り組みとこれからのプログラミング教育について

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― 1回目の調査結果の感想と、子供達の様子を教えてください。

昨年秋に、早稲田大学で行った1回目の調査では、プログラミングをする上での共通の概念「どのような手順で処理が進むのか?」という点は、どのツール・環境でも理解が深まったことが確認できました。また、どのツールでも、子供達から「もっと学んでみたい」という意欲が感じられました。

予想外であったことは、創造的に問題の解決方法を考えたり、応用問題に取り組んだり、新しいものを作ってみるということに関しては、プログラミングのツールや環境によって違いが見られ、それが予想を越えた違いでした。

多くのプログラミングツールを体験してきた児童は、応用的で空間を網羅する動きのプログラムへの理解度が高く、自由な考えをもとに回答しています。これは、誰かに教えられたわけではなく、自主的に作ってきた結果で、新しい創造性を見出すこととなりました。

例えば人が考える物の動きと、プログラムとして動かす場合とでは大きな違いがあります。この違いを認識し、効率よく問題を解決するために、どのようなプログラミングを用いたら良いのか…これはツールによって子供達の回答に差が出ました。これは、プログラミングに優劣をつけるのではなく、ツールや環境の特徴を、明確に知ることができた良い結果だといえます。

また、子供達にとっては、ワークショップでも無料体験コーナーでも、一通りツールを体験した後でも、時間を忘れて取り組んだり、もっとツールを使いたい、帰りたくないという状況にもなり、嬉しかったですね。

学びにおいて最も大切なことは、夢中になるということです。

プログラミングツールの使い方の説明や、きっかけ作りはしましたが、予想以上に子供達自身が、夢中になって取り組んでいく様子を目の当たりにできたことは、大変嬉しく思いました。このような体験の機会を、今後も増やしていきたいと考えています。

― 2回目の調査会場に「仙台」を選んだ理由は?

まず、日本国内の様々な地域に、この調査取り組みを伝えていきたいということと、それぞれの地域でプログラミング教育に携わる教育者、興味関心をお持ちの保護者の皆さんとの連携を図りたいと思っています。

そのなかで、今回は楽天株式会社仙台支店、コーダ道場、イトナブ等々、宮城県でプログラミング教育を行っている方々から支援の声を頂戴しました。

また、先の東日本大震災をふまえ、仙台・東北が復興の真っ只中にあって、大切なことはやはり、次世代を担う子供達の教育にあると思います。その点でも、一緒に取り組んでいきたいという思いもあり、2回目は仙台での開催となりました。

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― 2020年の小学校におけるプログラミング教育が必須となります。この点についてのどのようにお考えですか?

プログラミング教育は他教科の学習において、コンピューターを使うことによって、より理解を深められるという見せ方があります。あらゆる教科において、コンピューターを使うことによって、問題が解決できることを、子供達に知ってほしい…そのようなプログラミング教育の方向性をパブリックコメントとして発表しています。

また、プログラミングはクリエイティビティが発揮できるものであると考えています。自己表現の方法には、絵や文章など様々ありますが、プログラミングで何かを作ることでも、創造性が発揮できます。コンピューターは自己表現の強力な道具であり手段になります。

プログラミング教育によって、社会の問題を解決しながら自己表現もできる…プログラミングは、この2点を同時に実現できる最も強力なものであると考えています。

ただ、普段の暮らしのなかで、パソコンさえあれば、プログラミングは自分でルールを考え、自分で組み立てられるということを、子供達は気がつきません。また、最初の段階では「プログラミングは難しそう」だと思われがちです。プログラムは自分で組み立てられる!ということを感じやすい、ワークショップや体験の機会が大切だと考えています。

プログラミングを学ぶ前段階として、プログラミングに「興味を持つ」ということが大切です。「プログラミングは楽しい」「新しいものや仕組みをどんどん作っていける」「こうやって人の役に立っている」そういった「気づき」が子供達には大切なことです。

学校の先生方にも、普段あつかっている教科に関連付けた、プログラミングのワークショップを体験していただき、ご自身の教育や目的に合うツールや環境を見つけて欲しいと思っています。

― 学校などの教育現場に、エンジニアがプログラミングを教えに行くことについては、どのようにお考えですか?

プロのエンジニアが教育現場に入り、プログラミングを教えることについては、私は賛成です。エンジニアは、普段自分の成果やアイデアが社会にどう貢献できているのか感じにくいものですが、教育の現場ではそれがダイレクトに感じられます。これは、理屈抜きで嬉しいと感じる素晴らしい瞬間です。教育という経験はエンジニアにとっても、自身のモチベーションにも大いにプラスになるはずです。

また、オンライン教材の活用や、ビジネスとしての学校支援という点でも、エンジニアがプログラミング教育に関係することは、良いことではないでしょうか。

― 学校教育以外の習い事として、プログラミング教室はどうあるべきでしょうか?

習い事としてのプログラミング教育という取り組みは大いに良いと思います。プロから体系的に学べるように、しっかりと基礎から段階を踏んで応用に至るということが大切です。子供達が自ら積極的にプログラミングを学べる習い事として良いと思いますし、学校や地域と積極的に連携を組むことが大切だと考えています。

プログラミングは自己表現の強力な道具だと思います。子供に個性があるように、プログラミングツールにも個性があります。 子供達の目的に合わせたツールを提供することで、自己表現の可能性を広げてあげられるわけですから、そういった習い事、自己表現としてのプログラミング塾は良いことだと思いますよ。

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― 子供に限らず大人でも「どうやってプログラミングを学んでよいかわからない」という声があります。これからプログラミングを学ぼうとしている方へアドバイスをお願いします。

プログラミングは大事だから…という理由だと、自分の中にうまく動機づけができませんよね。会社でも学校でも「ある問題」に直面した時に、コンピューターを使うと簡単に解決できることを知れば、もっと楽に問題を解決する方法を考えるようになります。プログラミングを学ぶ人にとって、身近に感じられる題材に対して、「プログラミングによってこんな解決策がある」と知ることが大切です。

そのためには、プログラミング言語をいきなり学ぶ前に、人とコンピューターの「考え方の違い」を知ることが大切です。プログラミングは専門性が高く、パソコンの前で苦しみながら勉強するイメージもあるかもしれません。

「G7プログラミングラーニングサミット」のワークショップでは、プログラミングの基本を知ることができる「手触り感」を大切にしています。命令を読み込んで、動かすというコンピューターの基本的な動きを、ツールによって体感するところからスタートするとよいでしょう。

また小学校の先生方の中にも、プログラミングに高い関心を寄せている先生方は、フォーラムなどに積極的に参加されています。「G7プログラミングラーニングサミット」でも、一般社団法人みんなのコード と連携し、日本全国で先生方向けの体験会を開催予定です。

まずは、様々なツールや環境を試してみる、その中で楽しさを見出すところから始まると思います。今後開催されるワークショップに、ぜひ足を運んで実際にツールを試していただき、プログラミングを学ぶ楽しさを、体感していただきたいと思います。

今の小学校プログラミング授業の現場は?― 松田孝校長先生のお話

今回、特別ゲストとして、東京都小金井市立前原小学校校長 松田孝先生の特別講義も開催されました。プログラミング教育実践の第一人者である、松田校長先生にもお話を伺いました。

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― 2020年の小学校プログラミング教育必須化について、現段階での学校現場での捉え方を教えて下さい

先生方は各教科の中で、プログラミングはどうやって授業に組み入れてよいか、まだ手探り状態というのが現状です。これから必須化になるまでの3年間で、他校の事例やモデル校の実績を見てから、具体的に授業の内容が決まっていくのではないでしょうか。

― プログラミング教育についての思いを教えてください

まず、私は「プログラミング教育」ではなく「プログラミング授業」という言葉を使います。プログラミングは「教える」というよりも、教師と子供達が一緒に楽しみながら学ぶスタイルの授業になると思いますね。

今後プログラミングは、一般教養のようになっていくと考えています。そのためにも、コンピューターは必須の道具であり、またコンピューターに触れることによって、人の生活が豊かになるということを子供達に知ってほしいと思います。

実際に、コンピューターを使った授業では、子供達の集中力や学習意欲の高まりを感じ、特に集中力が継続するという点では、コンピューターは最高のツールといえます。子供達の成長を目の当たりにできる道具ですね。

また、コンピューターを通して自己表現が簡単になることや、コンピューターの汎用性によって、様々な新しい表現ができるようになってきます。子供達にとって、コンピューターは自分の表現を世界に発信できる最高のツールです。また、自分の世界観だけではなく、リアルな世界と関連づけることで、社会の多様性に対応していけるようになるのです。

子供達は、学校の授業というフィールドで、「プログラミングを活用して学ぶ」ことを経験していきます。集団で問題解決に取り組み、みんなで解決する方法を、プログラミングを通して実感できるようになります。

― 実際に子供達に体験させた、先生イチオシのツールはありますか?

まず導入としてScratchビスケットなどのビジュアルプログラミングが良いですね。特に「ビスケット」は、子供達が夢中になって取り組んでいます。また、子供達の主体性を高めるため、ビジュアルブログラミグを1年くらい学んだ後には「テキスト言語」を学ばせてみるも良いですね。

体験コーナーで紹介されたプログラミング学習ツールと各団体について

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・HOUR OF CODE :イトナブ

イトナブは「震災10年後2021年までに、石巻から1000人の技術者を育成する!」をスローガンに、東日本大震災の被災地である石巻市で立ち上がった一般社団法人です。子供達にプログラミングで遊ぶ場所を提供する他、ソフトウエア開発、デザイン業務など、あらゆるIT事業にも取り組んでいます。また、地元の石巻工業高校への出張講座も行い、プログラミング教育分野での地域貢献も継続的に行っています。

今回はHOUR OF CODEという全世界で開催されている、プログラミングサイエンスの学習ツールを紹介しました。イトナブのメンバーが、小学生に丁寧に使い方を教える姿は、被災地石巻の未来図のようにも見えます。

・Pyonkee :CoderDojo

CoderDojoは、7〜17歳の子どもを対象にしたプログラミング道場です。2011年にアイルランドで始まり、2017年1月現在、世界70カ国に1,200もの道場があります。日本では全国に70以上の道場があり、今回は、「CoderDojo仙台/泉」がPyonkee(iPadで動くビジュアルプログラミングツール)の体験コーナーを提供しました。

教えるスタイルの習い事としてではなく、子供達が自主的にプログラミングを学びに来る「道場」というスタイルをコンセプトにしています。    

・ichigojam:PCN仙台

PCNは全国に広がる小・中学生を対象とした、プログラミング教室です。今回はPCN仙台が、Basicでプログラミングをする小型コンピューター「ichigojam」を使用し、実際に組み立てながら学ぶスタイルを紹介しました。PCNでは小中学生が電子工作を気軽に取り組めるワークショップの開催を、継続的に行っています。

生活に密着した視点でのプログラミング教育を実施するとともに、小中学生のためのオリジナルプログラミングコンテスト「PCNこどもプログラミングコンテスト」を主催しています。

・litleBits:株式会社デジタルハイク

オープンソースであるlittleBitsは、電子回路を触れられる形で組み立てる電子工作キットです。ブロックを組み立てるように電子回路をつなげることで、「光らせる」「音を鳴らす」「動かす」という動作が、様々な材料で実現可能となります。

ストローのような形状の軽いキットを組み立て、littleBitsをつなげるだけで動いたり音が鳴ったりする様子は、小さな子供達にも驚きと楽しさを提供しています。

・PETS:for Our Kids

プログラムとはどのような考え方でものを動かしているのか?PETSは「プログラミング的思考を育むロボット」としてfor Our Kidsが開発しました。パソコンもタブレットも使わず、木製ブロックでプログラミングの基礎が学べるキットです.

「前に進む」「右に向く」「繰り返す」等のプログラムそのものがブロックになっています。PETSの背中にブロックを挿し込むと、命令通りにゆっくりと本体が動きます。マス目の書かれたシートには障害物カードを置き、クリアしながら進むようにプログラムするPETSには、難易度の違う「問題用のカード」も用意されています。

・PROCK :株式会社アヒル

PROCKは、タブレットやパソコンの画面上でブロックを組み合わせ、直感的にプログラミングが学べる株式会社アヒルのオリジナルツールです。たくさんの素材やキャラクターが用意されているため、すぐに始められるのが特徴です。簡単なアニメーション作成からスタートし、難しいゲームの作成まで段階的に学ぶことができます。

・アーテック・エジソンアカデミー:アーテック

アーテック・エジソンアカデミーは、学校教材・教育玩具メーカーアーテックが主催する、ロボットプログラミングスクールです。縦・横・斜めに組み立てられる独自開発のブロックでロボットを組み立て、プログラミングは「Scratch」をベースにしたソフトウエアを採用。「子供にさせたい習い事」としてのプログラミング教育に注力しています。

・LEGO マインドストームEV3

LEGO ®マインドストーム®は、レゴ社とMIT-マサチューセッツ工科大学が共同開発した、プログラミングロボット教材です。子供達には馴染み深いレゴブロックが、ロボットの本体となります。

ギアやモーターなど動く仕組みを知り、プログラミングによって実際に動かすことで「自分で考え、解決する力」を総合的に学べる教材です。小学生だけでなく、大学や専門学校でのロボット教育や、技術系の企業研修にも用いられる応用範囲の広い教材です。(機材提供:株式会社アフレル

・OSMO Coding

OSMO Codingは、プログラミングの言語をビジュアルブロックにし、iPadの画面上でキャラクターを動かすビジュアルプログラミングツールです。「まっすぐ進む」「右に曲がる」などのプログラミングはイラスト付きのブロックになっており、キャラクターを動かしたい順番に自分の手で並べる仕組みです。

動作確認を画面上で行うため、広い場所を必要とせず、プログラミングの基礎を体感しながらコンパクトに学べる学習ツールです。

主催の「G7プログラミングラーニングサミット実行委員会」では、学生の実行委員を中心に、「LEGOマインドストーム」「OSMO Coding」 を無料体験コーナーに展示しました。また、今回ボランティアで参加した学生さんからは、他教科の問題解決にプログラミングを活用する授業の実施体験談の話も出ていました。

小学校では、他教科の理解のためにプログラミングを活用する「実例づくり」が既に始まっているようです。

まとめ:プログラミング教育の未来

プログラミング教育が2020年に必須化になるという話題は、保護者の興味関心にばらつきがあるのが現状のようです。体験コーナーに参加した小学生の保護者の方の中には「成績や評価に直接結びつく教科の方が気になっており、プログラミング必須と言われてもピンとこない」という声もありました。

しかし、実際にツールを体験している子供達の目はキラキラと輝いています。子供達にプログラミングを教えるために、たとえ専門外の職種であっても、大人が先んじてプログラミングを学ぶのは、必須ともいえます。また、プログラミング教育は、ツールや環境/学ぶ場の提供など、ビジネスとしても大きな可能性のあるジャンルといえます。

「G7プログラミングラーニングサミット」では、調査結果をすべてオープンにしています。今後のプログラミング教育の参考となるだけでなく、各ツールを開発する企業にとっても自社の製品を検証できる絶好の機会といえます。

世界でも例を見ない「G7プログラミングラーニングサミット」の取り組みは、日本におけるプログラミング教育の未来をつくる、大きな架け橋となるでしょう。

阿曽
ライター
阿曽