- 更新日: 2017年04月05日
- 公開日: 2017年03月22日
フロムスクラッチ 請井氏「採用における敗北は、事業における敗北である」《新卒エンジニア育成カイギ その4》
「これからの新卒エンジニア育成のあり方」を考えるイベント、「新卒エンジニア育成カイギ」が2016年12月15日に行われました。
Forbes JAPANより2年連続で国内有望スタートアップに選出された、次世代型マーケティングプラットフォーム「B→Dash」を開発・提供しているフロムスクラッチ請井氏の登壇記事の後編です。
前回記事:《新卒エンジニア育成カイギ その3:フロムスクラッチ 請井氏が語る「破壊的イノベーションを実現するエンジニアチーム」の特徴》
新卒エンジニアが活躍するフロムスクラッチ
ここからは、弊社エンジニアの採用と育成についてお話しさせて頂ければと思います。まずは実例を2ケース紹介させて頂きます。
ケース1は、新卒1年目にして「B→Dash」の1つの領域(機能)の開発リーダーを担ってるエンジニア例です。
入社から9か月目の現在、プロパー・業務委託問わず、経験豊富な年上のエンジニアを含めた約10名の開発チームを統括しながら、自立的にチームマネジメントを遂行しています。
そのエンジニアは学生時代にプログラミングをしていた経験が多少はあったとは言え、開発プロセスや管理手法、そして開発対象であるマーケティングテクノロジー領域に精通していたわけではありません。そのような新卒エンジニアが1チームを持って業務推進していることは、シンプルに“すごいこと”と言えるのではないでしょうか。
2つ目のケースは、海外(ベトナム)の開発拠点へ単独渡航し、開発拠点としての立ちあげ、採用や開発プロセス整備、プロジェクトマネジメントを全てやり切りました。
こちらも開発未経験ながら入社後わずか1年ほどで渡航し、ベトナム滞在約4か月で成果を出した活躍事例です。
新卒エンジニアにとっては、なかなか高いハードルの業務だと思いますが、当然ある一定のサポートが必要であったとはいえ、本人の意思もあり、思い切って任せた結果でもあります。
「とびきり優秀な学生」を採るための採用戦略
では、なぜそんなハードルの高い目標に真正面から向き合い、貪欲に挑戦し、そしてクリアしていく新卒エンジニアが採用できるのか?この点について話を進めたいと思います。まず採用について。
本日ご来場いただいている皆様もそうかもしれませんが、エンジニアの採用であればエンジニアとしての経験。例えば、「主に理系の研究室でプログラムを書いてきた学生をどうやって採用しようか?」、「そういう学生が入ってきたらすぐに現場で活躍するようになるためにどんな研修設計をしてどのようにPDCAを回していけば良いか?」という点に議論が集中するのではないでしょうか。
このアプローチは間違なく正しい手法の一つであるとは思いますが、弊社は違うアプローチも採用しています。
弊社は、理系研究室出身者やコーディング経験者といった要件を設定するのでなく、とにかく「とびきり優秀な学生」を採用しています。
それこそ文系の学生でも「優秀であれば採用」していきます。
例えば、簡単なマトリクスで恐縮ですが、エンジニアスキルvs優秀(基礎スペックが高い)の2軸で4象限に分類した場合、当然ながらエンジニアスキルがありかつ優秀、という学生がどの企業でも欲しいと思います。
弊社でも同様です。弊社のように、リソースが限られたベンチャー企業がこの「エンジニアスキルがある×優秀」層のみを狙った採用は正直難しいところです。
弊社も採用実績はあるものの、この層だけで目標としている採用人数を満たすのは難しいというのが現状です。
このような現状において、ではどの層を狙いに行くべきか?というのが先程の話で、弊社は「エンジニアスキル」を基軸に置くのではなく「優秀」であるか?を中心軸として考え「非エンジニア×優秀」な学生を探して採用活動をしています。
例えば、2016年4月に入社したメンバーや2017年4月より入社予定のメンバーたちが就職活動時に獲得してきた内定辞退先は、外資系コンサルティングファームや外資系金融、総合商社などがほとんどです。
「ここに受かれば就職活動として成功!」と世の中が一般的に思うような企業の内定を辞退して、弊社に入社してきてくれている点を見ても、いわゆる“優秀な学生”が採れていると思っております。
では、なぜ採用できているのか。シンプルに表現すれば「全社をあげて採用活動に当たっている」ことに他なりません。
弊社は採用活動に関しては、全社員が協力体制を取ってくれます。加えて、異常なほど経営陣が採用活動に工数・時間をかけています。もちろん、細かなポイントはたくさんあります。イベントの設計の仕方、メッセージの作り方など挙げればキリがありません。
しかし、それ以上に大切なのが「採用にかけるコミットメントの大きさ」と言えます。
「採用における敗北」=「事業にとっての敗北」
採用のスタンスとして、社内で良く言っていることは『採用における敗北は事業にとっての敗北である。』です。
つまり、採用は社員全員で取り組むべき経営課題であるという共通認識ができあがっています。
会社の将来を支えるのは新卒です。会社の成長を現実のものにするためには、新卒採用は経営課題でもあるのです。
そのため、役員陣もフルコミットしています。社長も含めた役員陣は新卒採用に対して、イベント参加や面談、フォローなど、相当なコストをかけています。
採用単価に対しても一般的に1人あたりの採用コストが5~60万と言われる中、実数値は伏せますがその数倍以上ものコストをかけています。
金額に現れない形でも社員の約半数が関わるなど全社での取り組みとして対応しています。そこまでやってようやく優秀な学生に振り向いてもらえるようになるんだと思います。
エンジニアが挑戦し続けるカルチャーを構築する
一方、育成についてです。弊社では厳密な育成プランや研修制度を整備するよりも「自由に挑戦させる文化の醸成」を重要視しています。
文化を発信し続け、失敗と挑戦を許容し、それに伴う結果についてフォローする事を徹底しています。文化は空気や風土のようなものなので、なかなか具現化することは難しいですが、あえて表すとすれば以下のようになると思います。
・ビジョン:「大きな意思・夢を持ち、未来を描き続けよう」
裁量:「自由に取り組もう」
挑戦:「恐れず、迷ったら実行しよう」
学び:「どんどん挑戦し、その結果から学ぼう」
歓喜:「とにかく楽しみ、ワクワクしよう」
大きなビジョンに向かって自由に開発に取り組み・挑戦し、成功したら喜び、失敗しても学びのちに生かしていくことで成長していく、これらを実感していくことがとても大事です。
このような話は、言葉を変え品を変え、日常会話の中に埋め込んでコミュニケーションしていくというのが文化発信のポイントです。 上記を実現していくためには、上長としてはこの3つを持っているべきだと考えています。
- 何があっても最悪、上長が“ケツを拭く”
- 諦めていない奴は絶対に見捨てない
- 地図・コンパスは与える
文化を醸成したところで求められる成果が創出できなければ意味がなく、実現するために上長が支援するというのは当然ですが、とても大きなファクターになります。
常に高い視点から、過去の自身の経験から支援できることは多くあるはずなので、上長からの支えとして「この本・サイト見てみるといいよ」「あの人が知ってると思うから聞いてみたら」など、細かなフォローをし続けるということと、それを継続することがキモになってきます。
これらを象徴する言葉として『考える術を教えるべきで、考えた事を教えるべきではない。』をご紹介したいと思います。
経験差があったりすると、何をやるべきかのToDoレベルの答えを示しがちだと思います。この方が楽だからです。自分で考える事、クラウドワークスさんのプレゼンにもありましたけど、自分で勉強して学習して成長していくというサイクルを作っていく事は弊社でも凄く大事だと考えております。
今回お話しさせていただいた内容は非常識だと思われることもあるかもしれません。私もこれだけが正解だとは思っていません。
ただ非常識であることが不可能であるとは思っていなくて、『普通の採用』や『普通の育成』をしていただけでは『普通の結果』にしかならないのかなと思っています。
「B→Dash」を中心に、世界のマーケティングの常識を本気で変えてしまおうと挑戦し、新卒採用と文化醸成に異常なまでにこだわる。開発組織の採用と育成を担っていて、いつも気にしていることです。
本日は弊社の考え方をご紹介させて頂きましたが、皆様の今後の採用・育成方針に関する参考事例の1つとしてお役に立てれば幸いです。
最後に付け加えるとすると、私は“任せる勇気”を意識しています。
自分のできることは最悪自分でなんとかすることを腹決めした上でメンバーに任せる。そうしないとメンバーも新しいことにチャレンジしづらいと思うし、楽しめないと思っているので。
ぜひ、本日のメモを残して頂く際には“任せる勇気”という言葉を入れていただければと思います。ご清聴ありがとうございました。
\Webサイト担当者としてのスキルが身に付く/
次回予告
次世代型マーケティングプラットフォーム「B→Dash」を開発・提供しているフロムスクラッチの請井氏にご登壇頂きました。
続いてクックパッド株式会社インフラストラクチャー部長の星氏より「クックパッドにおける新卒エンジニアの育成」についてお話頂いた内容をお届けいたします。
クックパッド 星氏「新卒でも技術力を重視、尖ったエンジニアはエキスパート枠として採用」《新卒エンジニア育成カイギ その5》
Code部ではフロムスクラッチのCTO井戸端氏にインタビューを行っていますので、合わせてご覧ください。
エンジニアの仕事への誇り「僕たちが世の中を変える」 東大・元宇宙研究者のフロムスクラッチ CTO 井戸端氏が語るエンジニア論
- この記事を書いた人
- CodeCampus編集部