サイバーエージェント流、エンジニアが活躍するしかけ CA鷲田氏


サイバーエージェント流、エンジニアが活躍するしかけ CA鷲田氏
目次
  1. 「サイバーエージェントの技術者を活かす3つの人事戦略」
  2. 組織・環境作りで常に意識している3つのこと
  3. 外部中心から一転、技術者大規模採用へ
  4. 「企画2割・運用8割」
  5. エンジニアに光を当てた施策
  6. 「流行らなければ意味が無い」
  7. 横のつながり
  8. 芸術的な適材適所
  9. まとめ

先日、Code部を運営しているCodeCampが主催で「IT業界で急成長を続ける企業から学ぶ、エンジニアが活躍できる場の作り方」というテーマでセミナーを開催しました。今回は、本セミナーでお話頂いた内容や様子を2回に分けてご紹介していきます。

登壇者にはサイバーエージェント技術人事責任者鷲田学氏、リブセンスCTO平山宗介氏をお招きし、それぞれの企業で技術者がどのように活躍されているのか、またそのための仕組みづくりの秘訣をお話しいただきました。

今回はその第一弾としてサイバーエージェント技術人事責任者の鷲田学氏による「サイバーエージェント流、エンジニアが活躍するしかけ」についてご紹介します。

「サイバーエージェントの技術者を活かす3つの人事戦略」

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鷲田学氏プロフィール:大学卒業後、株式会社図研に入社。システムエンジニアとして就業し、Webシステム開発に従事。2004年に株式会社サイバーエージェントに入社し、新規メディアを担当、その後、広告部門や人事採用・育成を担当。現在同社において技術人事責任者を務める。サイバーエージェントHPURL:http://www.cyberagent.co.jp/[http://www.cyberagent.co.jp/](http://www.cyberagent.co.jp/)

サイバーエージェントといえば現在グループ会社合わせて約40社強、約3100名の社員を持つ成長を続けるITベンチャーです。かつては、広告代理店として躍進していた企業が、今ではサイバーエージェント籍の正社員1800名人中、半数近くが技術者となり、技術力の高い企業として急成長を果たしています。さらに離職率が高いと騒がれるIT業界の中でも7%と、エンジニアを魅了し、活躍できる仕組みを作り出しています。当日は、2004年当時から大変革を支えてきた鷲田氏より、様々な試行錯誤の中から見えてきた、エンジニアが活躍できる仕組み(採用・育成・活性化)の秘訣をお話いただきました。

組織・環境作りで常に意識している3つのこと

鷲田氏が入社した時の退職率30%から現在の7%という数字からも分かるように、いい意味で社員が働きやすい環境が作れてきていると同氏は語ります。これまで特に意識をしているポイントとして3つをあげられました。

①個人への光を当てる

②横の繋がりを作る

③芸術的な適材適所

「この3つを組織・環境作りをする上で意識しながら、実際の施策としては、日を追うごとに変化をさせたり、バージョンアップさせることがあり、ポイントとしてはこういう所を意識しています。」

外部中心から一転、技術者大規模採用へ

2004年アメブロ初期は開発を外部発注に頼る部分も多く、社内にはエンジニアの体制が整っているとは言えない状況だったようですが、アメブロを内製化しようという方針から一転、2006年に第一次エンジニア大規模採用を実施し、2010年に第二次大規模採用を行われました。

「2004年にアメブロを立ち上げてコレからブログでもっと伸ばしていくぞ、という中で、当時のアメブロをユーザーとしてサービスを知っている方もいらっしゃるかもしれませんが、サービスとして完全と言える状況ではありませんでした。それは外注先のベンダーさんが良くないという訳ではなく、外に開発部隊をおく事で、自分たちのサービスに対しての責任感やスピード感が足りていなかったのではとすごく反省としてあったと記憶しています。そこで開発体制を内製にこだわろうという方針が決まりました。」

「企画2割・運用8割」

鷲田氏が採用・育成・環境づくりというミッションに携わる中で「企画2割・運用8割」というキーワードが重要だと何度も語っています。IMG_4049

「新しい制度や企画を考える時に言っていることは、企画2割・運用8割。いい企画を作っても結局運用でこけたら意味が無いという所で、サービス開発なんかも一緒かなと思います。基本的に時流ですとか社流に合わせて会社を作り替えて行くという考え方があります。」

「あとは実行時のポイントとして、「企画2割・運用8割」というのはもう社内的な決めごとのようにやってますけど、ガチガチに企画して進んでも、会社が変化をしたらどんどん変わって行ってしまいます。むしろゴール設定と外しては行けない肝を3つくらい決めておいて企画や制度は実行している所があります。あとは運用しながら現場のエンジニアの声を聞きながら、軌道修正していくということを徹底しています。ほとんどの制度についてもそうですけど、長生きしているサービスもそうですし、スタートして抜本的に変えた制度もたくさんありますけど、運用のところで判断していきます。」

エンジニアに光を当てた施策

2010年から一気にスマホに舵を切ると決めたタイミングで、スマホのプラットフォームを0から仕上げようとなりました。しかし、プラットフォームを作るのにエンジニアの人数が足りないため、二度目の大規模採用をしようと踏み切りました。急激にエンジニアが増えて行く中で、技術者が埋もれて行く可能性を考慮し、そこから活躍するエンジニアにフォーカスする仕組みが考えられました。

「最初にやったのが新規開発会議というもので、積極的にアイディアを出して欲しいという人を2ヶ月に一回8名を指定して、その人によるモックの提案、新規サービスのアイディアを出す会議を作りました。直接技術執行役員とか藤田に提案出来るということで、どんどん自分で事業を作って行きたいというエンジニアも非常に多かったので、そういう人たちがうまくフォーカスされた仕組みとしてありました。」

「もう一つブレストランチというのは、どちらかというと緩い繋がりの中でエンジニアのアイディアを引き出すために、ランチしながらブレストするというものです。当時の課題として、プロデューサーの意見が強く、エンジニアやデザイナーのみんなも良いアイディアを持っているのに、なかなか押し切られているという課題が実は浮き彫りになっていました。であれば実際エンジニアの皆さんがアイディアを出す場を作りましょうというところで施策を作りました。

「ちなみにこれらの施策も、徐々に形が変わってきてですね、新規開発会議は指名制をなくしてモックプランコンテストやキカックソン(新規アイデアコンテスト)という形で、任意のエントリー型のコンテストを定期的に今は行うようになっています。」

「流行らなければ意味が無い」

制度を作る上で、過去に藤田氏から言われた一言が今の人事制度を作る上でのポイントになっていると話します。当時、とある提案を藤田氏にしました。その時、「いい提案だけど現場は白けるでしょ」という言葉から、何か一つ新しい事をやる時に白けないかというところを非常に意識するようになったそうです。IMG_4082

「何か一つ新しい事をやる時に白けないかというところをものすごく意識してやっています。結果的に社員全体が受け入れてくれて浸透しないと意味が無くて、やっぱり流行らなければ意味が無い。ちなみに新規開発会議とブレストランチはもうやってません。実際に流行らせる中で、いくつもしらけのイメージをして、これ言ったらあの人こんな事言いそうだなとか、とにかくビジュアルイメージを沸かせてイメトレをしながら制度を実行して行く。」

横のつながり

環境づくりとして、横の繋がりを意識するなかでサイバーエージェントでは様々な取り組みが行われています。

「webの社内報やっている企業さんも多いと思いますが、エンジニアとかは特に自分から自己発信をどんどんしていかないと目立たない所もあって、あえて社内報でフォーカスしています。あとは仕事以外の共通項として、非公式の相談役をおくようにしています。社内では「ななめ上の先輩」というような言い方で、つながりを増やす施策を打つようにしています。「シャッフルランチ」「社内懇親会」を推奨しているものもそのひとつの例です。業界的に離職率が騒がれる中で7%というのはこういうところが上手く寄与していると思います。」

「個人に光を当てる仕組みでサイバーエージェントはけっこう取り上げられることもあるんですけど、総会は大々的にやっています。基本的に現場の推薦ですとか事業部長の推薦のなかから選抜されるという形で、とにかく現場社員からのエントリーが非常に多く、ここは私が非常に誇らしい所です。こういう投票をもって投票されて結果的に能力や人望があるエンジニア・デザイナーが評価されて自分もああなりたいという文化作りをしてきたかなと思います。」

芸術的な適材適所

現場の声を受け入れた人材配置としては、2つの取り組みが紹介されています。IMG_4080

キャリアエージェント

「人事にタレントマネジメントに特化した部署があります。そこには社内の中でも比較的ベテランのメンバーがマネジメント経験やメディアサービス開発経験があるメンバーがいるのですが、そういったメンバーが定期的に対話をしながら現場の実態を拾っています。直接現場の声を拾うことでその人自身の適材適所を検討することができたり、部署の温度感を拾うことが出来ます。今ではキャリアエージェントという部署が浸透したので、自ら相談をしてきてくれる社員もいます。」

GEPPO

「人材データベースの総称なんですけど、月報の名の通り月に一回社員のコンディションをひろっていくという仕組みです。その情報を元に個別に対話をしたり、組織的に声が多いものから新しい制度や施策を検討することも多いです。また、その中に個人的に実は技術的にこういった所を勉強していて、自分で物作りにチャレンジをしたいみたいな事が書いてあったりする場合、新規サービスの立ち上げプロジェクトにジョブローテーションしたり、そう言うところにGEPPOが使われていたりします」

まとめ

「いい採用して横の繋がり作って個人に光をあてる。さらに組織が大きくなっていく中で、一人一人が埋没していくのではなく、一人一人の能力というものポテンシャルというものをどんどん引きあげて、抜擢し役割を与え活躍してもらうことが大事。そのなかで才能を可視化し芸術的な人事案というものをもっていくことが僕らの次のミッションだと思います。」

もともと広告代理店から始まり、現場に光を当てた制度や声を拾う仕組みを実践しながら、今では多くのエンジニアが活躍する会社に成長したサイバーエージェント。ここまで成長する上で、社内の決めごとのように企画2割運用8割という考え方を実践し、組織や制度も変化させてきました。鷲田氏はプレゼンの最後に、全社ビジョンである「21世紀を代表する企業へと成長する」と力強く語りプレゼンを締めくくりました。


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CodeCampus編集部
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