創立100周年の老舗企業がデジタル変革を推進できる理由 【対談】石田大成社 阿部氏×コードキャンプ 米田氏

創立100周年の老舗企業がデジタル変革を推進できる理由 【対談】石田大成社 阿部氏×コードキャンプ 米田氏

コードキャンプが提供する、デジタル変革のための人材育成プログラムを導入された株式会社石田大成社の阿部乙彦 代表取締役社長とコードキャンプ取締役/COO米田の対談をお伝えします。

創立100年を迎えたグローバル・クロスメディア・カンパニー。国内主要都市を始め
ロサンゼルス、ブリュッセル、スロバキア、バンコク、香港、上海、北京などに海外拠点・子会社を持つ。

広報メディアプランニングやセールスプロモーションなどの企画提案、Webサイト構築やCG制作などの
デジタル制作、マニュアル・カタログ制作、海外向け多言語翻訳など情報サービスに関わる事業を展開。

本社:京都府京都市、従業員数:1,442名(グループ全体)、主要取引先:トヨタ自動車グループ
JFRグループ(大丸松坂屋百貨店)、キヤノングループ、オムロングループなど。
※プロフィールは記事掲載時点(2017年3月)での情報

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目次
  1. 企業の情報化が進展し競合が増え、変化する市場環境
  2. デジタルへの対応は必然的。ITリテラシーは基礎的な能力として必須に
  3. デジタル時代へ適応する知識・スキルを身につけるための教育プログラムとは?
  4. デジタル変革を進めるためにトップの覚悟と、組織を越えたスピード感が求められる

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企業の情報化が進展し競合が増え、変化する市場環境

ーー米田:今回は、創業100年を迎えた老舗企業でありながらデジタル変革、新しいテクノロジーへ適応するための社員の教育研修に力を入れられている石田大成社様の取り組みをお伝えしようということで、代表の阿部様のお話を伺う場を設けさせていただきました。まずは、貴社の事業について簡単にお話いただければと思います。

当社は情報サービス業として、お客様の持っているコンテンツを分かりやすい形、新しい見せ方でお客様に伝えていくことにグローバルで取り組んでいます。我々としては、インフォメーションデザイン事業、ユーザーインターフェースビジネスと呼んでいますが、日本だとまだこの概念は薄く海外のほうが浸透していますね。

近年、デジタルデバイス(スマートフォン・タブレット)が急速に普及しているので、情報設計やコンテンツをデジタルデバイスに適応させる必要性がより増してきています。プロモーションからマニュアルまであらゆる情報がデジタルに置き換えられていますので。

ーーあらゆるデバイスを通じてのコミュニケーション設計・コンテンツ制作が、事業の中心にあるということですね。最近ですと、どういった企業が競合にあたりますか?

今はあらゆる業種の企業が競合になっています。広告代理店やIT系の企業、コンサルティング会社など。最近ではコンサルティング会社もIT企業やデザイン会社を買収してWebサイトやアプリを制作していたりしますし、例えばアメリカでは車の販売もWebサイトで完結するようになっており、ほとんどの産業が情報産業化しています。

あとは自動車会社が、顧客を囲い込むためにユーザーのスマホに天気予報やガソリンスタンド・渋滞の情報を配信していたりする。それと比較すると、日本はまだ国が狭くヒューマントゥヒューマンを重視する性質がありマスメディアもまだ強いので、海外と比較すると少し遅れている印象ですね。

ーー確かに海外でのそういった事例を伺うと、印刷業として創業された貴社の置かれている環境が大きく変化しているように感じられますね。

そうですね、まだ印刷業界という括りで見られることはありますが、自分たちはもうそう思っていませんので。印刷もメディアの一つでしかない。これからIoTの普及などによって商品の使い方が変化することで表現の仕方や、楽しみ方も変わっていきます。

我々の強みは業界ごとに高度な専門性を持ち、それをコンテンツとして正しくユーザーへ届けられることです。強みがある領域としては、自動車やバイク、流通、住宅産業、家電など。 どれもお客様の商品を理解していないと、適切に情報が届けられない。そこが強みになっており、プロモーションから修理のマニュアルまでをあらゆるメディアで制作しています。

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デジタルへの対応は必然的。ITリテラシーは基礎的な能力として必須に

ーーおととしから、プログラミングやテクノロジーの活用ができる人材を社内で増やそうということでお手伝いをさせていただいています。

阿部社長の問題意識として、こういった変革を起こしていくべきだと感じている理由はどのようなところにあるのでしょうか?

我々は海外でもインフォメーションデザインの事業を展開しているのですが、顧客から求められることが日本とは異なっています。我々のような会社が、デジタルデバイスに対応していることが当たり前に求められる環境です。

我々の顧客も海外に展開している企業が多く、同じように危機感を持っているのでデジタルへの対応を求められる。お客様が求めてくるのであれば、日本でも当たり前に対応できるようになるべきだと考えて取り組んでいます。

何か明確な意思決定があったというよりも、お客様からの要望も含めて環境がどんどん変化しているので当たり前の問題意識ですね。対応できるようにならなければ生き残れないだろうと。

ーー阿部社長のそういった問題意識をきっかけとして、社員のテクノロジーへのリテラシー向上、活用のための教育に力を入れていこうとされているのですね。

社員全体のテクノロジーへのリテラシーや、デジタルへの理解のレベルを上げようと。我々のビジネスでは結局「人」が商品だと思っています。 会社として社員の能力を伸ばすことに力を入れることは大前提です。今の時代、ITリテラシーは専門的な知識ではなく基礎的な能力として必須だと考えています。

どこの会社も、ITリテラシーは必須の知識だと理解はしていても、ついていけている人は本当に少ないですね。年配の方だとスマートフォンもろくに使えない、SNSを使ったことがないなど、若い人からしてみたらありえないですよ。

この前も、ソウルに行ったら80才くらいのおばあちゃんがタブレットを使いこなしたりしていて、ITリテラシーに年齢は関係ないと思っているのですが、日本は少し特殊なのかもしれませんね。

ーー今年も1月にCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー:アメリカで開催される先端技術の見本市)を視察されたそうですが、阿部社長ご自身も意欲的に先端技術に触れていらっしゃいますよね。今年は特にIoTを活用したプロダクトが多く見られたそうですが。

去年からIoTを活用したプロダクトは紹介されていましたが、今年はもうIoTを商品に組み込むのが当たりのようになっていましたね。プロダクトの中にセンサーが入っていることは当たり前で、「それをどう使うか?」という話が中心になっていた印象です。

我々の顧客企業もどんどんテクノロジーの活用・デジタル化を進めています。ユーザー体験が変化しているので必然的に我々も変化に対応していかなければなりません。

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デジタル時代へ適応する知識・スキルを身につけるための教育プログラムとは?

ーー2015年、2016年と大きく分けて2つの研修を実施してきました。初年度は、管理職・若手に関わらず営業担当者向けにITリテラシーを高めるための研修を。二年目となった昨年は、選抜された若手の方を対象に顧客開発からサービスのプロトタイプを作成する研修を行わせていただきました。

「ITリテラシーは必須」とおっしゃっていましたが、我々が実施させていただいた研修プログラムに対してどのようなことを期待されていたでしょうか?

うちの会社は常に現場の社員がお客様と接点を持ちながらメディアの企画・提案をしているので、特に現場の社員にITリテラシー・スキルを身につけてもらう必要があります。 いくら経営層や部長がITを理解していても、現場の人間が話している内容が変わらなければ意味がないので。現場の社員のITリテラシーを向上させることが最初の教育・研修の目的でした。

お客様の案件をデザインしていくために、基本的なITリテラシーは必須の知識です。うわべだけでなく、どういう仕組みで動いているのか理解しなければ正しくお客様をリードできない。実際にお客様からいただく案件もデジタルの活用を前提にしているものが増えてきています。

ーー研修プログラムの内容についてリクエストをいただいた時に驚いたのは、「営業全員がプログラミングを学ぶ」というところでした。

営業職の社員へ求めるITリテラシーの水準をかなり高く設定されていると感じたのですが、それに関してはいかがですか?

今は、営業という仕事に求められる役割が昔と変わってきています。商品やソリューションを売り込むことが営業の役割でしたが、いまはお客様の要望を元にしてメディアをコーディネートする、デザインする役割なので、自分たちが提供するメディアの中身を理解する必要があります。

実際に、デジタルメディアの仕組みがわかっている人と、そうではない人では提案の質が違ってきます。自分が担当している業種について深く理解をしつつ、お客様の悩みをメディアでどう解決するか。

私自身、最近は営業という言葉があまり適切ではないと感じるようになりました。これからはプロデューサーとか、コーディネーターとか、そういう役割の仕事になっていくと思います。

ーーなるほど、取り扱われているメディアが変化することに応じて、営業に求められる役割も変わってきていますね。

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ーー次に、昨年度のプロトタイピングの研修では、シリコンバレーで行われているようなサービス開発の手法を取り入れ、全参加者が顧客ニーズをベースにしたサービスのプロトタイプ(アプリ・Webサービス等)を作成するところまで取り組む研修プログラムを実施しました。

営業職の方が手を動かして、アプリやWebサービスの開発を体験することやプロトタイピングのスキルを身につけることの意義についてどう感じていらっしゃいますか?

デザインしたい情報を具体的な形にしてみることの難しさは、理屈ではなく具体的に自分で手を動かしてみないとわからないですよね。私自身も、手を動かしてWebサイトをつくったりしていましたが、本当にやってみないとわからないし理解できないことが多いと感じます。どんどん実際の案件でもチャレンジしてもらいたいですね。

ーー研修では、実際のお客様の案件をテーマにして課題に取り組んだ社員の方もおり、研修で制作したものをお客様に実際に触っていただきながら提案を進めているとうかがいました。

紙に書かれたプレゼン資料を提出するのでなく、アプリやスマホの上で動くプロトタイプをお客様にみせながら一緒にブラッシュアップをしていくような営業をしている会社は、まだあまりいないのではないでしょうか。

文字で表現することも大切なのですが、提案したい内容をビジュアルで表現して直感的に理解してもらうことも重要ですね。最近はテキストよりもグラフィックや動画で情報を表現することが増えています。あらゆる場所に情報が溢れている時代ですから、わかりやすく鮮明に表現されていないと目に止まらないですし、新しいメディア企画の方法として取り組んでもらいたいですね。

最近、特に課題として感じているのは、コネクティッドカーやスマートホームなど、IoTが広がることで情報設計の形が変化することです。特に海外企業は動きが早いので。

ーー社員の方々に触れてもらうために海外へ視察にいくことも奨励されていますよね

目を開かせたり学習してきてもらうという意味で海外にはよく行かせています。特に若い人は、一回は行っておくようにと。それは未来のための投資だと考えています。我々は製品があるわけじゃないので、人が良くならないとどうしようもないわけですから。

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デジタル変革を進めるためにトップの覚悟と、組織を越えたスピード感が求められる

ーー組織がテクノロジーの変化に適応していくために経営者に求められる役割についてお伺いできればと思います。阿部社長はどのようにデジタル変革に取り組まれていますか?

変化が早い時代なので、トップがイニシアチブをとって組織を動かすことが重要だと思います。そういう企業のほうが動きも速いし、変化への適応も速いですから。 どこの会社でもそうですが、分業・縦割りの組織で変化に対応するのは難しいですね。縦割りはある決められた部分を管理することには向いているのですが。

特に、企業としてITをどう活用していくのかトップが方針を示すことが重要です。うちのIT戦略はこうであると。縦割りでそれぞれの部門に考えさせるとスピードが遅く、統率が取れなくなってしまう。

あとは意識的に、縦割りの組織と関係ないネットワークをつくって情報が自由に行き来するようにしています。お客様は常に自分たちの商売に関係がある新しい情報を欲しがっていますし、「どういう提案をしてくれるのか?」という期待感を持ってくれているわけですから。それに答えられるようにレベルを上げていかなければいけない。

ー部門の壁を越えてトップがイニシアチブをとって舵を切ることが重要ですね。

よく耳にする話ではありますが、苦しんでいる企業もまだ多いように感じています。御社では、横のつながりや連携を強化してデジタルへの適応を促進するために他に取り組まれていることなどはありますか?

今のところは、組織図にはないプロジェクトを新たにつくって、そこを起爆剤にしていくようにしています。例えば、海外で他企業と一緒にサービスを立ち上げて、そこに各部署から人材を集めたりということは、今まさに取り組んでいますね。新しいノウハウや情報が入ったらそこから横串で展開していくようなイメージです。

あとは、新たにIT部門を設立してエンジニアの人数を増やし技術面のサポート体制を強化すること、IoTなどの新しい領域については研究開発担当をおくことなどにも取り組んでいます。ただ、繰り返しになりますが、一番重要なのは現場の社員がテクノロジーを理解してお客様と接することですね。

ーーデジタルに適応するための象徴的な事例をつくったり、組織としてエンジニアリングが主役の部門を設立することで組織全体の能力を高めて行きつつ。、結局最後は現場の社員が、お客様が重要というのは素晴らしいコンセプトですね。

最後に、今後の展望や取り組んでいこうと考えていることなどがあればお聞かせください。

デジタル化に適応するための横断型のプロジェクト立ち上げや他の企業との連携は、引き続き力を入れて進めて行きたいと思っています。

あとは、最先端の技術の話になると、うちの社員を教育するだけでは追いつかないので、M&Aなどで補っていくつもりです。海外のIT系スタートアップなど、もう高速で進めていきますよ。それが今の組織と一緒になって、しっかり混ざり合うところまでやり切らなければいけないと思いますけれど。

そうなってくると社内とのハブになれる人材も重要になってきそうですね。

そうですね。これからますます社員の教育や採用に力を入れていくことになると思います。 来年度以降もぜひCodeCampには力を貸してもらいたい。

ーーありがとうございます。石田大成社様のように創業100年を迎えた歴史が長い企業様が、テクノロジーの変化を捉えて適応していくためのお手伝いができているようで非常に嬉しく思います。本日はありがとうございました。

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Tech 2 GO編集部
ライター
Tech 2 GO編集部

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