- 公開日: 2017年03月09日
世界の最新動向に見るプログラミング義務教育化の流れとは?
2020年、文部科学省は小学校でのプログラミング教育を必修化することを検討中です。一部の小中学校では、試験的にプログラミングを教えているところもあります。第4次産業革命を支えるIT人材を育成するためにも、プログラミングの授業を教育カリキュラムに取り入れることが重要だと言われています。果たして、未来のITを支える人材が生まれる環境を作ることはできるのでしょうか。
そこで今回は、プログラミング必修化の背景から必要性、最新動向までをまとめました。
プログラミング教育が必修化される背景
プログラミング教育が必修化されることについて、その一番の要因はIT人材の不足にあるでしょう。
世の中全体にスマートフォンが普及し、小中学生もパソコンをさわることが少なくなっています。その一方でビッグデータやIoTなどの分野でIT人材の需要は増加しています。
今後はますます高度で多様なIT活用が進んでいくと予想されている一方で、その「高度で多様な」ITを扱うことのできる人はどれくらいの人数になるのでしょうか。
2016年に経済産業省が発表したIT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果によれば、プログラミング教育が小学校で必修化される2020年には、IT人材が36.9万人不足すると予想しています。また、2030年には78.9万人のIT人材が不足するとの予想です。
今後のIT産業が発展することは非常によいことですが、それに見合っただけの能力をもつIT人材を確保することが今よりも難しくなると予想されます。ゆえに、プログラミング教育の重要性が認識されつつあるのでしょう。
海外におけるプログラミング教育
ここでちょっと海外の事情に目を向けてみましょう。海外のプログラミング教育は、現在どのようになっているのでしょうか?
文部科学省の委託事業として行われた諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究によると、プログラミング教育について先進的な各国は以下のような状態になっているようです。
なお、エストニアでは全ての小学校から高等教育でプログラミング学習を選択できるようにすることを目標にプロジェクトが実施されていましたが、現状では学校の裁量で教育を行うかを決めている状況になっています。
初等教育(小学校に相当)で必修
日本の小学校に相当する初等教育において、プログラミングが必修になっている国は以下の5カ国です。オーストラリアとフィンランドについては、2016年から必修化がはじまりました。
- 英国(イングランド)
- ハンガリー
- ロシア
- オーストラリア
- フィンランド
前期中等教育段階(中学校に相当)で必修
日本の中学校に相当する、前期中等教育において必修となっている国は以下の通りです。
- 英国(イングランド)
- ハンガリー
- ロシア
- 香港
前期中等教育段階(中学校に相当)で選択科目
- 韓国
- シンガポール
後期中等教育段階(高校に相当)で必修
- ロシア
- 上海
- イスラエル
後期中等教育段階(高校に相当)で選択科目
- 英国(イギリス)
- フランス
- イタリア
- スウェーデン
- ハンガリー
- カナダ(オンタリオ州)
- アルゼンチン
- 韓国
- シンガポール
- 香港
- 台湾
- インド
- 南アフリカ
日本におけるプログラミング教育の最新動向
日本でのプログラミング教育について、2012年に制定された新学習指導要領によって、「プログラムによる計測・制御」が中学校の技術家庭科で必修になりました。
しかし、そのカリキュラムを正しく教えることができる教員が不足しており、「ちゃんと教える能力がある先生にあたれば、正しく学ぶことができるが…」という状況にあります。
また、平成29年度の政府予算案にて、文部科学省は理数・情報系に突出した意欲や能力がある小中学生に対して、より発展的な教育プログラムを提供する「Jr.ドクター育成塾」を全国規模で実施することを予定しています。
民間ではEdTech(エドテック)と呼ばれる、IT×教育の分野で様々なサービス・プロダクトが誕生しており、旧態依然とした教育業界を変えることを期待されています。
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まとめ
プログラミング教育の最新動向をまとめました。
IT人材の不足という問題について、IT人材を教える人も不足している状況であり、ただ単に必修化してカリキュラムを改変するだけでは問題解決には至らないという意見もあります。だれが教えるのか、教える人はどうやって育成するのか、は世界共通の課題と言えそうです。
それゆえ、現在の施策に追加してIT教育全体の底上げをするための何かが必要になってくることでしょう。そのためには、学校教育だけでなく、大人に対してのプログラミング教育も推進していく必要があるのではないでしょうか。
今後のITがさらなる発展を遂げるように、ひとりひとりがプログラミングについての知識をつけるべき時代がすでにやってきています。
- この記事を書いた人
- 黒田剛司