- 更新日: 2022年06月06日
- 公開日: 2017年02月24日
「興味の幅がチームの生産性を上げる」ー新CTO成田氏が語る”これからのクックパッドに必要な人材”
非エンジニアが聞く「エンジニア採用」のリアル”の第2回目は、クックパッドの新CTOに就任された成田さんへのインタビューです。ものづくりへの熱い思いも伝わるインタビューになってます。ぜひご覧ください。
成田 一生さんプロフィール:
2008年にヤフー株式会社に新卒入社、Yahoo! メールのバックエンドエンジニアを務める。
2010年にクックパッドへ入社。サーバサイドのパフォーマンス改善や画像配信を担当するインフラエンジニアとして経験を積み、現在はCTOとしてエンジニア全体の責任者を務める。
趣味はメールマガジンのオプトアウト。
【サービスぺージ】クックパッド https://cookpad.com/
前回はWantedlyCTOの川崎氏にインタビューを行いましたので合わせてご覧ください! ウォンテッドリーCTO川崎氏が語る「Wantedly People」と採用への思い 前編
新CTOがエンジニア採用時に重視する2つのポイント。
- 本日はよろしくお願い致します。このインタビューでは、成田さんのようなエンジニア採用に関わる人たちに、採用に関するリアルな本音を伺っております。
まずは、今の事業やポジションについて教えていただけますか。
クックパッドにはいくつか事業がありますが、メインは社名にもなっているレシピ投稿・検索サービス「クックパッド」です。
私個人は、新卒でヤフーに入り転職してクックパッドへ移りました。インフラエンジニアだった時期が一番長く、インフラストラクチャー部のマネージャーから今はCTO(インタビュー当時は VP of Engineering)として会社のエンジニアリング全体を見ています。
- エンジニア採用にどう関わってらっしゃいますか。
採用基準作りや面接などを担当しています。細かいフローは中途か新卒かで違いますが、どちらもエンジニアは必ず私との面接が入ります。選考フローによっては技術課題があり、現場のエンジニアと人事が協力して課題を作っています。
- 面接の時など、採用時に重視している点はありますか。
採用基準の一つとして、たとえばこれまで作ってきたものの品質や、その問題解決へのアプローチについて見ています。
他にも、技術的な視野の広さについて問うことがあります。 いわゆるフルスタックほどではないにしても色々できる人、例えばサービス開発ができる上に、バックエンドやインフラも触ったことがあるという人は、サービス開発の現場ではとても重宝されます。
- スペシャリストよりもオールマイティーな人、興味レベルでもいいから色々と触っている人ということでしょうか。
スペシャリストで突き抜けた人ももちろんいます。ただ、興味の幅が広い方がいると、チームでの開発が成功しやすいんです。
例えば、iOSアプリを書くのがメインだけどAPIのバックエンドのことも多少知っているという人なら、バックエンドの役割や気持ちも分かります。
「DevOps」という言葉がありますが、これはツールなどを工夫することで開発と運用がお互いに歩み寄り、協業しやすくするという方法論でした。
これはDevとOpsだけに限った話ではなく、担当分野が違うエンジニア同士にも当てはめることができます。
個人プレイに走らず、チームメンバーがうまく連携して大きな成果を出すためには、自分の専門外のことに対しても理解を深めるのが大切だと考えています。また、クックパッドは、そういうエンジニアが活躍しやすい会社です。
- チームでの成果を上げるために、広く興味を持ち知識を蓄えてほしいということなんですね。CodeCampでも、営業の方がエンジニアとの会話をスムーズにするためにプログラミングを学ぶこともあったりして、考え方は似ていますね。
サービスは常に改善していくもの。改善し続けられる人と働きたい。
- 他に重視している点はありますか。
サービス開発に携わるエンジニアに対しては、これまで作ってきたサービスを継続的に改善してきたかを重視しています。
たとえばアプリをストアに出して、レビューでの指摘事項を自分のアプリに反映しているかどうか。作ったものに対してちゃんと想いを持って改善しているか、そういうところをすごく見ていますね。
– ユーザーのことを考えていれば指摘内容を反映するのではないか、ということでしょうか。
はい、趣味で開発していると、どうしても飽きがきてしまい改善するよりも次のものを作りたくなるものです。
その気持ちを乗り越えて、自らユーザーフィードバックを元に改善してきた人と、クックパッドに入ってからその視点を学ぶ人とではマインドに大きな差があると考えています。
面接では、いままで作ってきたものを見せてもらうことが多いのですが、作ったものは嘘をつけません。作ってきたものはごまかしがきかず、その人を一番正確に表します。
- 広く興味を持ちながら常にユーザーを見てサービスを改善していく方、というのが一緒に働きたい人材像でしょうか。
私はすごく飽きっぽいので自分を棚にあげてしまう発言になるのですが、粘り強さというか、継続的に何かをできている人はとても尊敬できます。そういう尊敬できる人と働きたいですね。
- ちなみに今はクックパッドですが、新卒で入られたヤフーでは、メールシステムの担当をされていたんですよね。
「何してるかわからない」と言われることがバックエンドエンジニアの勲章。
よくご存知ですね(笑)
新卒で、運良くYahoo!メールのバックエンドという、かなり大規模なシステムに携わることができました。
業務を行う中で、複雑なフラグがついた大量のデータをさばくと色々なことが起こるということを知りました。学生時代はフロントエンドやWeb
デザインに興味があったのですが、業務を通じてバックエンドへの興味が湧き、だんだん裏側の方が好きになっていきました。
- フロントからバックに移られた成田さんの思う、バックの面白さとはなんでしょうか。
バックの面白さは非常に伝えにくいですね。
フロントと違い画面が無いので、こんなサイト作ったよカッコイイでしょうではなく、ほらこんなにトラフィックが来ているのにCPUこれだけしかつかってないのすごいでしょう、となりますから。
- それは確かにわかりにくいですね。特に非エンジニアだと、ああ、うんみたいな反応になってしまうかもしれないです。
ただ、フロントとは違い、インフラのチームに存在感がありすぎてはダメだと考えています。インフラのチームが忙しそうに運用しているということは、サービスにトラブルが多いことを意味するからです。
多くのアクセスがあっても、サーバーはエラーもなく平和そのものでありたいです。
常にチームが平和だと、あの人たち何してるんだろうねと思われるかもしれないのですが、それがインフラエンジニアとしては勲章です(笑)
あの人たち何をしているんだろうね、暇そうだねって思われるぐらいに、徹底的にオペレーションを自動化したり、障害が起こりにくいようにしたりしたいという気持ちで仕事に取り組んでいます。
- 同じエンジニアであっても、大きく方向転換をされています。キャリアに対する葛藤の時期はあったのでしょうか。フロントかバックか、そういう悩みはあったんですか。
バックが凄く楽しかったので、悩んだりはしていません。悩みがあったとすれば、エンジニアとしてのキャリア設計の部分です。
ヤフーで私が携わった業務では、ヤフー独自の技術スタックを用いた開発がメインでした。 大規模なサービスを支えるためには必要なものばかりでしたが、社外で使われている技術にもっと触れたくなりました。そこで仕事が終わってから、家でいろいろな技術を勉強して知識を増やすように心がけていました。
大企業はベストソリューションを知っている。
- キャリアを考える時に、大企業に入るべきかベンチャーに行くべきかという悩みを抱える方は多いと思います。成田さんとしてはどうお考えですか。
私は、両方経験できるのが望ましいと考えています。
例えば、新しく社員が入社した時にPCを調達するという単純な課題についてみても、社員が10人程度の会社なら誰かが量販店に買いに行くような牧歌的なやり方も出来るかもしれませんが、年間何十人、何百人も入社するような大企業では不可能でしょう。
この例以外にも、大企業は成長の過程で様々な状況のベストソリューションを見つけて乗り越えてきたはずです。
大企業でそういった状況ごとのベストソリューションを学んでおくと、ベンチャーの成長過程ではかなり役立ちます。
私も大企業にいたからこそ自分の取捨選択の結果を想像することができていますし、組織の舵取りをする上で非常に役立っていると実感しています。
- 話が変わりますが、成田さんは、ブログもだいぶ続けてますよね。
エンジニアはどれだけアウトプットできたかが名刺になる。
最近1年に一回書くかどうかなので、続けているとは言い難いですが(笑)
昔はQiitaのようなエンジニア向けのサービスがなかったので、勉強したことやちょっとしたコード片を自分のブログに書いてキャリア形成に役立てたいという気持ちがありました。
今は個人ブログより、技術的TipsならQiita、コードならGitHub、といったサービスに乗ったほうが技術ブランディングに効果的だと思います。
私がアウトプットを意識し始めたきっかけは、学生時代に会ったあるエンジニアの方の影響が大きいです。
その方は作ったwebサービスをリリースするだけではなく、動画にしてYouTubeにのせるという活動もされていました。
私は中学生くらいのころからプログラミングをやってきて、いろいろなものを作ってきたのですが、作ったものがデータとしてほとんど残ってないんですよね。何を作ってきたのかすらはっきりと思い出しきれない。
私がなぜそんなにアウトプットできるのか聞くと「ネットで公開して残すところまでを意識してものづくりをしているから」「サービスが動かなくなっても、動画でデモを撮って記録を残していれば自分のキャリアにできる」ということを言われて、衝撃を受けました。
その時、しっかりとアウトプットしてネットに残していかなければ自分のキャリアにならないんだな、と感じたんです。
- クックパッドで活躍している人や評価されている人に、何かそういうアウトプットでの共通項がありますか。
クックパッドでは、オープンソースに貢献できているかどうかをエンジニアの評価基準に入れています。
例えば、当社が使っているRuby on Railsのバグを見つけたら、自然にパッチをプルリクエストで送ってマージしてもらう、そういう行為が出来ているかどうかです。
このオープンソースへの貢献は、基盤側かサービス側であるかといったことには関係なく、全エンジニア評価の軸になっています。
オープンソースで飯を食っている以上、オープンソース活動が自然にできているかどうかというのは、全員に求めるべきだと思っていて、もしできていない時は、評価査定で指摘されます。
オープンソースのタダ乗りはしない。コミュニティへの貢献がビジネスも成長させる。
- オープンソースへの貢献を個人評価にまで組み込んでいるのはあまり聞きません。
オープンソースを使う場合、コミュニティが健全に保たれるよう貢献するところまでビジネスに組み込む必要があると考えています。
例えば、あるオープンソースプロダクトにおいて私たちが最初にバグを見つけたとします。それを放置し、コミュニティの誰かが直してくれるのを待っていると、それはコミュニティへのタダ乗りを意味します。こういったタダ乗りが蔓延してしまうと、特定の誰かに負担がかかり続けてしまい、誰もそのプロダクトのメンテナンスをしなくなることも考えられます。
もし私たちがビジネスで使っているRubyやRuby on Railsがそんな状況になってしまっては、私たちのビジネスを維持できなくなってしまいます。
そのため、バグを見つけて報告するというようなレベルから、パッチを書くというところまで含めてオープンソースに還元することで、コミュニティが健全に維持され、私たちのビジネスも発展できると思っています。
- 評価の話が出ましたが、これからのエンジニアに求めたいスキルだったりマインドはありますか。
まずは、ものづくりを楽しんで欲しいです。最近はプログラミング環境がすごく整っていて、一歩踏み出すだけでいろんなものを作れるようになっています。
世の中にあるものをどんどん使って、自分や誰かが不便と感じていることを解消できるものを作って欲しいです。
あとは、ものづくりのための学習自体も楽しんでほしいと思っています。
私は子どもの頃ピアノを習っていたことがありますが、個人のピアノ教室の先生の家に行って、教本を使った基礎練習をしていました。
最近の子どもたちの間ではYouTubeにあるプロの練習動画を見ながら楽器の練習を行うのが流行ってきているそうです。最初から一流のプロの演奏を見ながら練習できるような時代になっています。プログラミングも同じで、トレーニング方法が進化しているので、学習自体を楽しいプロセスにすることでどんどん成長できるはずです。
- 確かに今は、環境が整ってきています。
プログラミングに関しても、コードキャンプさんのように、学べる環境があるのは非常にいいですよね。私が小さいころは入門用の教本はほとんど無いうえに教えてくれるような人もおらず、本に書かれたBASICのサンプルコードを意味もわからず打ち込んで勉強していました。
- その時にコードキャンプがあれば(笑)
はい(笑)コードキャンプさんがあるので、今の人たちはすごく恵まれてますね。
\Webサイト担当者としてのスキルが身に付く/
自分で作ったものが世にあるのが気持ち良い。
- 成田さんは小説を書いたり、音楽をされたり、感情表現が得意なように思えます。ただ、エンジニアとして、そうした感情を冷静に分析していたり、数値化していくロジカルなところもお持ちです。そういう定性と定量の部分は、相反するのかなと感じるのですが、ご本人としてはいかがですか。
ものづくりをする人にはいろいろなタイプがいます。
プライベートでのものづくりでは、私はただ書きたいだけの人です。
昔の自分の日記を読んでその時の感情を思い出すような、その形態が私の場合は小説なんですね。他の人が読んでも下手くそで面白くないと思いますが、自分が10年前に書いた小説を自分で読むとすごく面白いんですよね。
そういう、自分で読んで面白いと思うために書いているので、社会に対して自分の創作を伝えたいとかは考えてないです。
- 何かを作り出したいというスタートなんですね。何かを残したいという欲求というか。
それはあります。単純に、自分が作ったものが世の中にあるというのはすごく気持ちいい。
人間は生まれてから死ぬまでの間、小説を書いたり音楽を作ったり創造的な行為をして何かを生み出していきます。
そうして何かを生み出すことで、生まれた時のポテンシャルを超えていくこともできるんじゃないかと考えることもあります。
ものを作るという行為によって、なんとなく自分が増えるみたいな感覚があって、それが面白いなと思います。
- 非常に哲学的ですが、サービス開発についてもそうした感覚もあるんですか。
そもそも、私はサービス開発が好きですが、あまり得意ではないんです。
私以上にサービス開発が得意な人と、全く同じ道を進んでもその人に追いつくまでかなり時間がかかります。
それより、そういう人がフルパワーで働ける環境を作ったり、インフラを整備したり、そういうところで自分の価値が出せると思っています。
- ヤフーから移られる時、そうした自己分析を行って戦略的にキャリアを形成されたのでしょうか。
いえ、転職してから方向展開しました。
元々サービス開発が好きでしたし、学生の時は自分でwebサービスを作っていたのでクックパッドに来るまではサービス開発を担当できるなと考えていました。
ただ、ヤフーからクックパッドにサービス開発エンジニアとして入った時、周りと全然レベルが違っていて、私はプロのレベルに達してないなと痛感しました。
そこで、その当時手薄だったインフラや基盤系をやったほうが会社に貢献できると思い、キャリアをそちらに集中しました。
- そこに至るまでには色々なお考えがあったんだと思います。ただ、そもそも外に興味がなかったら、どこが忙しいか気づけないかもしれません。
1つの課題を解決したら、次の手薄なところ、大変なところへ自分を動かしていくというのが、自然にできていました。
手薄になっているところを見つけて自分の持っているスキルで成果を出すことができる、これは私の特性、性格なのかもしれません。
- 自分の得意なところを見つけてそこに集中していくこと、そのためにも日頃からいろいろな興味を持っておくことが重要ですね。
- 最後に、次回の方をご紹介いただけますか。
私の前職であるヤフー株式会社でCTOをされている藤門千明さんをお願いします。
- 本日は、非常に参考になりました。ありがとうございました。
ありがとうございました。
【サービスぺージ】
(インタビュアー・構成:藤本大輔)
【インタビュー後記】
インタビュー後にCTOに就任された成田さん。ものづくりへの情熱やオープンソースに対するリスペクトが感じられたインタビューでした。採用ポイントも明確で、今後もたくさん良いエンジニアを見つけていくんだろうなと感じました。
続いて、ヤフー株式会社のCTO、藤門千明氏へインタビューを行いました!新卒入社したヤフーでCTOに就任された経緯とは?
- この記事を書いた人
- CodeCampus編集部