- 更新日: 2017年03月30日
- 公開日: 2014年10月15日
VOYAGE GROUPの成長し続ける勉強会カルチャー
先日、Code部を運営しているCodeCampが主催でセミナーを開催しました。テーマは、「IT業界で勝つための、技術を軸とした社内文化を創るには?nanapiとVoyage Groupが実践する人材育成と効果」。今回は、本セミナーでお話頂いた内容を2回に分けてご紹介していきます。
登壇者には VOYAGE GROUP 三浦 裕典氏、nanapiCTO和田 修一氏をお招きし、技術を軸とした社内文化を形成するため、プログラミング研修を取り組んだ背景から実際の効果・実施内容などについてお話していただきます。
今回は、 先日上場を果たしたばかりの大注目企業、VOYAGE GROUP 三浦 裕典氏による「成長し続ける勉強会カルチャー」についてご紹介します。
プロフィール:三浦 裕典氏
2009年VOYAGE GROUPの前身である株式会社ECナビに入社。DBA(DataBase Administrator)として全社的なDatabaseの設計、運用、技術支援などを行う。2013年からERDG(Engineer Resource Development Group)を立ち上げ主に若手エンジニアの育成支援領域を担当。エンジニアインターンシップTreasure、Sunriseの取り纏めなども行う。 つい先日上場を果たしたVOYAGE GROUPですが、この度 そんなVOYAGE GROUPの人材育成を担う三浦氏から、これまでの勉強会の変遷をご紹介いただき、それを通じて醸成されたVOYAGE GROUPの勉強会カルチャーと、それらの勉強会を継続してきたことで生まれた価値についてお話いただきました。
社内文化を形作る人事制度
最初に、VOYAGE GROUPでは、文化を形作るいくつかの明確な行動指針があり、それを元に社員を評価する人事制度が確立されていると、三浦氏は語ります。
SOULとCLEED
「SOULとは経営理念と呼ばれる物で、CREEDいうのが行動指針です。VOYAGEではクルーにたいして9つの行動指針を掲げているのですが、これらを体現しているかというのも評価制度に入っています。3ヶ月に1回、この行動指針に乗っ取って、活動しているか、振る舞っているか、360度すごいことを目指しているか、というのを評価の中で見るようにしています。」
SCREW
「CREEDに基づく活動として、SCREWというものを行っています。SCREWという名前は、VOYAGEの船ということで、船のスクリューをイメージしているのですが、社内の中の3つのプレイヤーを表しています。職種毎に縦割りで、各々の仕事だけを頑張ってもいいものはできないし、楽しくないだろうと。そこで、CREEDになってくる。エンジニアの中で楽しくやるって訳でもないし、1人で頑張るわけでもない。仲間と事を成すという事をどんどん突き詰めた時、それぞれが重なっている部分をどんどん作っていき、そのど真ん中にある3すくみになっている何かを作れたときに、ものすごくバリューを出せる可能性があるんじゃないかということを、非常に大事にしている」
VOYAGE GROUPにとっての勉強会の意義
一般的には勉強会は手段に過ぎないと述べた上で、勉強会を続けていくことで、大きな価値を生まれると三浦氏は言います。
「勉強会の立ち位置は、企業目線で言うとあくまでも手段だと思っています。価値を生み出すための手段の一つ。ちょっとわかりきった話かもしれないが、勉強会をすることによって筋肉質な組織を造りたいとか、環境に適用していきたいとか、自学自習できるようなプレイヤーを増やしたいとか。それをすることで企業が目指す本質的な価値に向けて、小さな投資でそれなりのメリットがもらえるのではと考えています。ただ、それだけでは無いとも思っています。」
「勉強会は一回ではなく継続することが大事かなあと思っています。なので、それをすることで様々な価値を生む。当然継続すれば、サイクルみたいなのが生まれると思う。PDCAとかリーンスタートアップみたいな定型な形ではなくて、勉強会を続けることによって転機みたいなのが来るという意味で、サイクルと言っている。」
データベースの危機が勉強会のきっかけに
盛んに勉強会が行われているというVOYAGE GROUPですが、そのようなカルチャーが生まれたきっかけは、三浦氏の入社した2009年には既にその契機があったと言います。それは、当時危機的状態にあったデータベースの改善策だったそうです。
「データベースのボトルネックはSQLでした。ひたすら改善改善改善。改善続けてるんです。ただ改善しても改善しても無理なんですね。アプリケーション書いている人達がSQLを使うので、アプリケーションエンジニアと2人3脚でチューニングしていかないといけない。なので、どこまで行ってもアプリケーションエンジニアの実力が上がっていかなければ、いたちごっこなんですよね。だから勉強会しましょうと。」
2009年の成功体験により、勉強会カルチャーが形成された
この当時の勉強会は、管理者の三浦氏とエンジニア・企業の三者ともにメリットのある勉強会だったため、その成功体験を通じて、エンジニア間での勉強会カルチャーが出来たとのことでした。
「2009年から勉強会カルチャーがめちゃめちゃあったんですよね。エンジニア系のメンバーっていうのは、有志を立ち上げてけっこう勉強会をやっていました。いったん振り返ってみると、問題があって勉強会して、効果が現れて、三者ともWin-Win-Winでいけた。」
「もう2009年にはこうゆうふうに勉強会のカルチャーがあり、それが2013年でも続いているんですよね。勉強会やりましょうかというと、やりたいやりたいと手が上がってきて、じゃやりましょうという文化を作っていっています。」
このように勉強会をひたむきに続けてきたという三浦氏ですが、全ての勉強会が必ずしも企業に受け入れられるわけではないと語った上で、VOYAGE GROUPではそれでも勉強会を続けている理由があると、三浦氏は言います。
「KPIを測ろうとすると難しいんですね。企業にとっては、この勉強会って今やる価値はあるんだろうか、となってしまって。他にやるべきことがあるんじゃないだろうかと。うちの会社は全てやっているんですが、なぜそれをやっているか、これからちょっとご紹介していきたいと思います。」
勉強会の継続によりストレッチの効いた組織へ
ここで転機が訪れます。サービスが安定し、人やサーバーの余力が出てきたことで、いよいよ会社が次の段階に進むという状況になったとき、勉強会のメリットが徐々に顕在化していきます。
「元々データベースの勉強会で出てきた副産物で、サービスが安定稼働してきたことで、サーバーリソースとかがどんどん開放されてきたんですよね。そうすると、なんとかそのリソースを使わせたいと思う組織が結構出てくるんですね。その時にはSQLを書けなくてはいけないが、一年半くらい勉強を続けているので、ものすごくストレッチの効いた組織になっているんですよ。なんで会社の状況もフェーズというかステージが上がっている状況になっていました。」
非エンジニアの勉強会の立ち上げ
そして、勉強会を続けてきた大きなメリットが花開きます。それが、非エンジニア向けの SQL勉強会の立ち上がりです。勉強会を続けてきたことにより、SQLの強みやリソースの余力が生まれ、それによりデータ分析のニーズが生まれたことで、そのような下地が社内にはできていました。 しかし、その裏には、CREEDやSCREWなどの人事制度があったと、同氏は言います。
動機付け-CREED-
「社員目線では、なぜ分析するのっていうところにはまだ響いてないんですね。だんだん響いてくるんですが、うちの会社は、成果を出したいとか活躍したいとかっていうのに対して、すごい価値があるものだとしています。なので、報償のしくみだったり、半年に一回総会みたいなことをして表彰したりとかで、CREEDに基づいて行動しているか、チャレンジしているかを評価しています。」
目線の一致-SCREW-
「SCREWで非エンジニア・エンジニア達が被るようなことを施策として打っていますので、エンジニアがアーリーアダプターなんですね。これ可能性があるよっていう会話が、すごいしやすい状況になっている。お互いに勉強すれば同じ目線で会話ができるっているのを、現場の人間達は言っている。これを体現するためにアクションを起こしている。」
このように、勉強会を続けることで社内に下地を作り、明確な人事制度で社員を促すことで、非エンジニアも巻き込んだ勉強会カルチャーが誕生しました。
非エンジニアの勉強会の結果
「結局、一緒に勉強をやってくことで、理解が深まっていくだけじゃなくて、目線そのものがあってくる。同じ統計手法を使った会話もできできるようになるかもしれないし、そうゆうところでも強みが出てくるかなと思っています。」
まとめ
「勉強会は、短期的なリターンだけでなく、中長期的な視点でリターンを得る状況もあります。今回で言えば、データベースの勉強会を続けてきた事によって、ストレッチの効いた組織が出来てきて、その時のバックボーンとして、一緒に学んで行こう、というSCREWのような組織文化が裏ではあった。 勉強会は「点」なんですよ。他のものと絡み合っていって、点同士が結びついて線になるように次のステージが出来るのかなと思います。」
「最初の方にですね、将来に向けた技術への投資だとか言ったのですが、実はこれどうでもいいかなと感じたりしませんか。勉強会カルチャーだったりとかして、ステージが上がっていって、攻めるような事ができ、サービスを拡大出来るための何かを生み出せるのではないかと。
なので、KPIも測れないんですね。もう少し違う目線でいいのではないかと。どちらかと言うと"人を軸とした事業開発会社"としてちゃんと事業が立ち上げっているか。事業がどんどん立ち上がるかという所で測れるのではないかなと思っています。」
- この記事を書いた人
- CodeCampus編集部