「それ、ユーザーに必要?」ユーザー中心の組織文化を支えるピクシブの新入社員研修



「それ、ユーザーに必要?」ユーザー中心の組織文化を支えるピクシブの新入社員研修

イラストコミュニケーションサービス「pixiv」を軸に、クリエイターの創作活動を支援するサービスを展開しているピクシブ株式会社。ユーザー中心のプロダクト開発を行う現場には、その軸をぶらさないためのチーム作り・教育のヒントが散りばめられていました。

今回は、コードキャンプでプログラミング/テクノロジー人材の育成について取り組んでいる取締役の堀内がユーザーファーストな開発現場をつくる新入社員研修についてお話を伺ってきました。


ピクシブ株式会社
取締役 コーポレート本部 本部長 丸山大輔氏(写真中央左)
執行役員 技術マネジメント室 室長 小芝敏明氏(写真右)
クリエイタープラットフォーム事業局 局長補佐 高橋孝太郎氏(写真中央右)

インタビュアー:コードキャンプ株式会社 取締役 COO 堀内亮平(写真左)

目次
  1. 「ピクシブらしい」プロダクトのつくり方を体感する新入社員研修
  2. 「ユーザーが求めていること」を考え抜く
  3. 職種の枠を越え、プロダクト開発に集中する
  4. 非エンジニアでもプログラミングを行う組織文化
  5. ユーザーの「一瞬」を逃さないチームづくり

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「ピクシブらしい」プロダクトのつくり方を体感する新入社員研修

--本日はありがとうございます。今回はピクシブさんで行っている新入社員研修のお話をベースにユーザーを中心においた組織運営についてお話を伺っていきたいと思います。
まず、2018年度に入社した新入社員向けにどのような研修を実施されていたのかお話を聞かせてください。

丸山氏:ピクシブには今年の4月に12人の新入社員が入社しました。職種別にはエンジニア7名、デザイナー3名、ビジネス2名です。特にエンジニア職はコードが書ける人、プロダクトを開発した実績がある人を中心に採用しています。

小芝氏:他社さんでも実施しているような基礎的なビジネスマナーや社内の業務理解を深めるための研修も実施しているのですが、一番力を入れているのは「ピクシブでのプロダクトの作り方を体験する」というカリキュラムです。

ピクシブには職種に関わらずメンバー全員がユーザーを中心においてプロダクトをつくるというカルチャーがあります。

ディレクターやエンジニア、デザイナーなど役割に関係なくユーザーについて深く考え、サービスをどう改善していくか常にディスカッションして仕事を進める。そのような仕事の進め方の共通理解をつくるための研修です。

この研修では8日間にわたって、実際の開発プロセスを疑似体験することで、ピクシブでのプロダクトの作り方・考え方をについて理解を深めてもらいます。最終日には、新入社員それぞれが自分の力で企画・開発したプロダクトを社員の前で発表してもらうことになっています。

前提条件として、どの新入社員も採用プロセスの中でインターンを経験しておりポテンシャル的には入社してすぐに活躍できる実力を持っています。

しかし、「ユーザーを中心においてプロダクトをつくること」「職種をまたいでチームとして仲間で仕事をすること」などピクシブで働く上で求められるベースの部分は、学生のうちに体験したことがない人が多いので必ず研修で教育するようにしています。

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丸山氏:どんなに能力が高い新入社員でも、研修を通じてピクシブでの仕事の進め方やカルチャーに触れ学ぶことは非常に重要なことだと考えています。

ピクシブが大切にしているプロダクトの作り方やチームワーク、ユーザーのことを考え抜く姿勢を学び体験することで、現場でより早く活躍できるようになります。

「ユーザーが求めていること」を考え抜く

--入社してすぐのタイミングで組織として大切にしているカルチャーや考え方を浸透させることや、現場配属後すぐにチームワークを発揮できるように支援を行うことは非常に重要ですね。

コードキャンプでも昨年度からLINEさんのエンジニア職の新入社員研修をお手伝いさせていただいているのですが、そちらでも「チームで働く」ための型を習得することを目的の1つにおいています。参考:グローバルで戦える日本の若手エンジニアを増やしたい。LINEが新卒研修で行っていること
「ピクシブでのプロダクトの作り方を体験する」という研修はどのような内容で実施しているのでしょうか?

高橋氏:全体として、プロダクト開発のための企画を最初の1週間で、その後の1週間で実際に手を動かしてプロダクトを開発し社内で発表するという流れで実施しています。企画から発表まで1人で取り組んでもらうので、非エンジニアでもプログラミングを学習しながら自分の手でプロダクトをつくる経験をしてもらっています。

企画をしてもらうフェーズでは、プロダクトのアイデアを出すための「思考法」の講義を行っています。

「世の中でこれから取り組むべき課題とはなにか?」「それを解決するための手法としてどのようなサービスがあればよいか?」などを考えるためのアプローチについてレクチャーを施し、ピクシブのサービスに関係なく世の中の課題について徹底的に考え抜くというワークを行っています。

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このカリキュラムでは「イシューからはじめよ(著者:安宅和人)」という書籍を特に参考にしているのですが、仕事に取り組む上で「自分たちが本当に解決するべき価値がある課題とはなにか?」を考え抜く、脳みそに汗をかくような経験をしてもらうことが狙いです。

新入社員が企画として考えてきた「解決するべき課題」に対して、メンターとなる社員から「それは、ユーザーが本当に困っていることなのか?」という問いかけを徹底的に受け「イシュー」や「仮説」の質をあげていくワークを行います。

メンターは各プロダクトのマネージャークラスの社員が務めているので、現場で働くときに投げかけられる問いとほとんど同じレベルの深さで議論を進めてもらいます。

小芝氏:ここは新入社員が一番苦戦するパートで「こんなに頭を使って深く考える経験をしたことがなかった」という声がよく出てきますね。笑

しかし、「自分が今取り組むべき仕事とは何か?」を考えられるようになることで、仕事を通じて提供できる価値や問題解決の質が変わるので妥協なく徹底的に考え抜く経験をしてもらっています。

職種の枠を越え、プロダクト開発に集中する

--仮説を立てる能力や、問を見つける技術を磨くことは仕事をしていく上で普遍的に求められるスキルですね。
チームでユーザーを中心においたプロダクトを開発するためにもそういった共通理解を持っておくことが必要ですし、新入社員になったばかりのタイミングでそういった思考法や深く考え抜く経験を積むことができるのは非常に価値があると思います。

高橋氏:後半の開発研修では、非エンジニア向けに2日間で簡単なサービスをつくってもらう研修を行い、その後は新卒のエンジニアとデザイナー、ビジネス職同士でプログラミングを教え合いながらサービスのプロトタイプを作り上げるところまでやり切ってもらっています。

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小芝氏:ここで特に意識しているのは、職種が異なる新卒同士のコミュニケーションを促すことです。現場でサービスをつくる上でエンジニア・デザイナー・ディレクターの間のコミュニケーションが上手くいけばいくほど、プロダクトの開発スピードが速くなり質も向上します。

全員が自分一人でプロダクトを企画し開発するという課題に取り組んでもらっているので、グループワークのような要素は無いのですが、エンジニア職の新入社員とプログラミング経験のない社員が教え合うことで、交流する機会を意図的に設けて円滑にコミュニケーションがとれる信頼関係を醸成しています。

開発してもらったプロダクトは、全社員が参加できる発表会(中間/最終の全2回)でプレゼンテーションを行いお披露目されます。それぞれの新入社員が企画・開発したプロダクトに対して社員からフィードバックや感想をもらえるようにオンラインのスプレッドシートに意見を投稿してもらっています。

これから一緒に働くことになる社員から意見をもらうことで、「ピクシブ基準」の仕事の進め方、ユーザーを中心においたプロダクト開発で求められる視点などを感じてもらう場にできているのではないでしょうか。

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非エンジニアでもプログラミングを行う組織文化

--非エンジニア職の方がプログラミングやエンジニアの仕事について理解することは業務を円滑に進める上で必須ですね。コードキャンプでも非エンジニア職向けにプログラミング研修を提供することが多いですし、社内でも自社プロダクトを使って自由にプログラミングが学べる環境を開放しています。
ただ、必要性を感じて仕事としてプログラミングに取り組んでもらうよりも好奇心や興味を持って自発的に「やりたくなる」雰囲気をつくることが大切だと感じます。

丸山氏:ピクシブでは新入社員同士で「プログラミングを教え合う」ということを研修の中で行ってきました。そういった積み重ねもあり非エンジニア職の社員が「プログラミングを学習する」ことへの心理的ハードルがかなり低くなっていると思います。

小芝氏:一例としては、カスタマーサポートを担当する社員がユーザーの声を受けて自分でコードを書いて修正を行ったり(参考:ビジネス職だってコードを書く!ピクシブ流CSカルチャー)、ディレクターがエンジニアに声をかけることなくgitを見に行って進捗を確認するということが日常的に行われています。

入社する最初の段階でプログラミングに触れる、エンジニアの仕事について理解することで職種による壁ができづらくなっています。

ビジネス職でもプログラミングに苦手意識を持つということはなく、自発的に「プログラミングを習得したい」という声も多く出てきますし社内でも定期的にプログラミングを学習する機会が設けられていますね。

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ユーザーの「一瞬」を逃さないチームづくり

--「プログラミング」というと、専門的なスキルでエンジニアでなければ「できない」「必要が無い」と思われがちですがそんなことはなく、自分の仕事上のミッションを遂行するための「便利なツール」なんだと認識してもらうことが大切ですね。
エンジニア職以外でもSQLを扱えたり、GAS(Google Apps Script)などを使って業務を効率化できるようになればいい。

ピクシブさんのように、役割を越えてプログラミングを業務で使う方が組織の中にいることをもっと当たり前にしていきたいです。

丸山氏:ピクシブのカルチャーとして「仕事の守備範囲を決めすぎない」ことも大きな特徴だと思っています。

例えばエンジニアであってもユーザーの気持ちを理解するためにカスタマサポートの研修を受けることがあったり、ユーザーであるクリエイターの方と直接交流する機会を設けたりしていますね。プロダクトの中心にはユーザーがいるという意識を持ってもらうようにしています。

小芝氏:社員が少人数だった頃から「プロダクトチームの距離感」を大切にしているので、エンジニア部門・ビジネス部門など機能別に組織を分けず、同じプロダクトに関わるチーム単位で席を並べて仕事をしています。

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お互いの「ちょっとした瞬間」を逃さないような組織づくりが大切だなと。アジャイルな開発アプローチが好きなので、役割にとらわれずみんなで意見を出し合いながらユーザーに喜んでもらえるプロダクトづくりを実践してきました。

ハード的な面でも、オフィス内に物理的に壁がなくフロア全体が見渡せるようにしてあったり、チーム内でのコミュニケーションがとりやすい机のレイアウトにしていたり、自分たちのカルチャーを根付かせるために意図をもって設計しています。

--本日は、非常にいいお話を聞かせていただきありがとうございました。
新入社員研修から現場まで一貫して、「自分たちが解決するべき課題とは何か?」「ユーザーが喜ぶサービスとは何か?」を職種にとらわれず考え形にしている様子や、プログラミングが役割にとらわれず活用されているということでとても感激しました。

コードキャンプの活動を通じて、より多くの企業で同じような光景が見られるようにしていきたいと思います。

【お知らせ】
コードキャンプでは、エンジニア向け教育/研修、非エンジニア向けのプログラミング研修についての取材にご協力していただける企業様からのご連絡をお待ちしています。
共有していただいた研修内容やノウハウは、世の中のエンジニア教育/育成に関わる企業担当者の方々にメディアやイベントを通じてお届けしていきます。

取材についてのご連絡はこちらから:https://codecamp.jp/corporate/contact

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CodeCampus編集部
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